研究・論文
Re : Thyroid Cancer Among Young People in Fukushima(letter)
津田博士らの論文における深刻な誤りについて(letter)
要約
津田博士らは、福島県により公表された福島県「県民健康調査」の統計報告を分析し、福島県の甲状腺がん罹患率は、日本全体と比較して著しく高いとの分析結果を報告しました。しかし残念ながら、彼らの分析は、定常有病集団(prevalence pool)の期間を4年と設定した点に、重大な方法論的誤りがあります。
彼らは福島での甲状腺検査で発見された甲状腺がん患者集団について、甲状腺がんの症例ががん検診および細胞診で検出(「がん検診による検出」)可能な日から、甲状腺がんが臨床の場でがん検診なしで診断できたあるいは手術した(「臨床的に検出」)日までの期間として、原発事故からがん検出までの最大期間である4年間を用いて、定常有病集団(prevalence pool)を仮定しました。
この仮定は、すべての症例でがんが、原発事故時あるいはそれ以降に、がん検診により検出可能になったこと、そしてこれらのがん全てが4年以内に臨床的に検出されるほど進行したことを意味しています。しかしながらこれら双方の考え方には不備があります。彼らは二つの重要な可能性を無視しています。まず⑴がん検診により検出可能となった日(通常不明である)が、原発事故より前であったのではないかという可能性があること、また⑵甲状腺がんの進行は非常に遅いため、多くのがんが4年間では臨床的に発症しないのではないかという可能性があります。つまり定常有病集団における「4年間と仮定した平衡状態」はもはや成立していません。したがって論文の本質的な指標である罹患率比(IRR)には、その分子である福島で臨床的に検出されたがんの罹患率が過大推定されています。
書誌情報
タイトル | Re : Thyroid Cancer Among Young People in Fukushima(letter) |
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著者 |
高橋秀人1)、大平哲也1)、安村誠司1)、Nollet Kenneth1)、大津留晶1)、谷川攻一1)、阿部正文1)、大戸斉1) |
掲載誌 | Epidemiology(Letter). 2016 May |
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