研究・論文
Effects of external radiation dose on pediatric peripheral blood components after the Great East Japan Earthquake: Fukushima Health Management Survey
東日本大震災後の避難地域における小児の末梢血成分に対する外部被ばく線量の影響:福島県「県民健康調査」
要約
【背景】2011年3月の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故により、福島県では放射性物質が広範囲に拡散しました。福島県「県民健康調査」では、事故後の住民の健康を長期的に見守るための調査が継続されています。これまで小児の末梢血成分の経年的変化について、被ばく線量との関連を詳細に検討した研究は報告されていませんでした。また、原子放射線の影響に関する国連科学委員会は、福島事故後の小児の被ばく線量は低いものの、特に事故時5歳以下の小児に対する影響評価の重要性を指摘していました。本研究では、避難地域に居住していた小児において、外部被ばく線量が末梢血成分に与える影響を検討しました。
【方法】対象は、事故当時に避難地域に居住していた15歳以下の小児およびその後に出生した乳児を含む27,844人です。2011~2017年度に実施された健康診査データと、事故後最初の4か月間の行動記録から推定した外部実効線量(EDEE)を解析しました。対象者を1歳未満、1~4歳、5~10歳、11~15歳の4群に分け、白血球数、白血球分画(リンパ球、好中球など)、ヘモグロビン値、血小板数との関連を評価しました。また、被ばく線量別の比較に加え、検査値を下位5%、中央90%、上位5%に分けた解析も行いました。
【結果】平均EDEEは0.8±0.7 mSvであり、中央値は0.6 mSvでした。多くの対象者は1 mSv未満の低線量被ばくであり、最大値は約8.9 mSvでした。EDEEの平均値が1 mSv未満および1 mSv以上の群に分けた解析では、末梢血成分の値は、ほぼすべて年齢相応の基準範囲内にあり、外部被ばく線量の高低による有意な差はほとんど認められませんでした。年齢別・性別解析でも一貫した線量依存性の変化は確認されず、一部で統計学的有意差がみられた項目も散発的で、臨床的意義のある変化とは考えられませんでした。また、検査値の下位5%群や上位5%群においても、EDEEとの明確な関連は認められませんでした。
【結論】福島第一原発事故後の避難地域に居住していた小児において、事故初期の外部被ばく線量は概して低く、EDEEと末梢血成分との間に一貫した関連は認められませんでした。本研究結果は、福島事故後の低線量外部被ばくが小児の造血機能や末梢血検査値に明らかな影響を与えていないことを示唆しています。
書誌情報
| タイトル | Effects of external radiation dose on pediatric peripheral blood components after the Great East Japan Earthquake: Fukushima Health Management Survey |
|---|---|
| 著者 |
橋本浩一1, 2、中野裕紀1, 3、坂井晃1, 4、島袋充生1, 5、風間順一郎1, 6、大平哲也1, 3、石川徹夫1, 7、長尾匡則1, 3、岡崎可奈子1, 3, 8、佐藤志帆1, 3、安村誠司1、大戸斉1、細矢光亮1, 9、郷勇人1, 2 |
| 掲載誌 | Sci Rep. 2026 Apr 13;16(1):19068. |
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