研究・論文

甲状腺検査

Response to the letter of Midorikawa et al

緑川氏からのletterへの返信

要約

本稿は、先に公表した「Detection of thyroid cancer among children and adolescents in Fukushima, Japan: a population-based cohort study of the Fukushima Health Management Survey, eClinicalMedicine,2024;75: 102722」に対し、緑川氏らから投稿されたletter「Ethical issues in collecting data used in epidemiological studies, eClinicalMedicine,2025;80: 103058」への返信です。内容は下記の通りです。

緑川氏らから我々の研究に対して書かれたレターに感謝いたします。同書簡は、3つのコメントに対する回答を通じて、甲状腺検査(TUE)についてより詳しく説明できる機会を与えてくれました。残念ながら、彼女らは以下のように誤った理解に基づいて読者を誤解させています。

第一に、緑川氏らは「甲状腺検査は国際がん研究機関の勧告に反している」と指摘していますが、彼女らの理解は正しくなく、実際は福島の甲状腺検査は国際がん研究機関の勧告に従っています。国際がん研究機関の勧告は将来の原子力事故に備えるためのものであり、福島の甲状腺検査に関するものは含まれておりません。またこの勧告の2つ目は、「長期的な甲状腺モニタリングプログラム」の提供を検討すべきであると述べています。つまり国際がん研究機関専門家グループは、この分野には「重要な考慮事項」がある可能性を認め、「最終的な決定は政府、関連当局、原子力事故の影響を受けた社会によってなされる」と述べております。福島県での甲状腺検査は、他の報告書で説明しているように、国際がん研究機関の勧告に反しているものではありません。

第二に、緑川氏らは、学校での甲状腺検査がオプトアウト方式で実施されていると誤解しております。実際は、小児および青年から(未成年者の場合はその保護者からも)提出された署名入りのインフォームド・コンセントを個別に取得するなど厳格に実施されております。インフォームド・コンセントの取得手続きは、時間と経験とともに進化しております。これに関し、学校やその他の会場で行われる検査は、2011年9月に初めて、そして直近では2020年9月に、福島県立医科大学の倫理委員会で審議され承認されています(承認番号1318)。

第三に、緑川氏らはそれぞれ独立した「県民健康調査」検討委員会と福島県立医科大学の倫理委員会の承認の意義を正しく理解していないと思われます。周知の通り、倫理委員会は、研究計画が倫理的・科学的に容認できる場合にのみ研究の実施が承認されます。県民健康調査の活動はすべて、年に数回開催される独立した「県民健康調査」検討委員会によって審査されております。2019年10月にTUEの実施方法が承認され、参加の任意性とインフォームド・コンセントの取得方法が確認されました。現在の方法には、年2回の甲状腺ニュースレターの作成と郵送、検査スケジュールに基づく通知の配布、専用ウェブサイトへの教育ビデオの掲載、専門家による講演会の開催(学校やその他の公共の場での要望に応じて)、参加の任意性に関するテレビでの説明などが含まれます。

私たちは、正確でわかりやすい情報を広める方法を改善し、希望者全員に適切なTUEを提供できるよう、引き続き任意の調査であることを強調していきます。

書誌情報

タイトル Response to the letter of Midorikawa et al
著者

高橋秀人1, 13、安村誠司2, 13、髙橋邦彦3, 13、大平哲也4, 13、志村浩己5, 13、大戸斉13、鈴木悟6, 13、鈴木眞一7, 8、石川徹夫9, 13、鈴木聡6, 13、馬恩博10, 4、長尾匡則4, 13、横谷進11, 13、神谷研二12, 13
1 帝京平成大学、2 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、3 東京科学大学教育研究組織総合研究院M&Dデータ科学センター・生体多元情報研究部門生物統計学分野、4 福島県立医科大学医学部疫学講座、5 福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座、6 福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター、7 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)二本松病院外科、8 福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、9 福島県立医科大学医学部放射線物理化学講座、10 福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター健康増進センター、11 福島県立医科大学甲状腺・内分泌センター、12 放射線影響研究所、13 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター

掲載誌 EClinicalMedicine. 2025 Jan 18:80:103059.
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