研究・論文
Ultrasonography-based reference values for the cross-sectional area of the thyroid gland in children and adolescents: The Fukushima Health Management Survey
超音波検査による小児・青年の甲状腺断面積の基準値:福島県「県民健康調査」
要約
福島県県民健康調査「甲状腺検査」では、結節嚢胞の有無に加え、甲状腺の横径、厚さ、縦径を測定しています。これまでに、小児の甲状腺の横径、厚さ、縦径計測値から算出した甲状腺容積について報告しました。その際、縦径について、小児では首の伸展が困難な場合があり、また青年期においては甲状腺の大きさから縦径を一画面に描出不能の場合があり、縦径の計測値が不正確である可能性を指摘しました。甲状腺容積の評価は小児において臨床的に重要であるため、横径と厚さから甲状腺容積の評価の簡略化された方法を今回報告しました。
本調査の対象は「甲状腺検査」に同意された299,927名{先行検査(平成23年10月~26年3月)}、269,660名{検査本格1回目(平成26年4月~28年3月)}としました。そのうち、身長・体重・甲状腺計測値が不詳な対象者、重複の検査受診者、21歳以上の対象者を除外した317,847名(女性156,913名、男性160,934名)を解析しました。
性、年齢ごとおよび体表面積0.1 m²ごとに、Box-Cox変換で正規分布に調整後、甲状腺の横径と厚さ、およびそれらを乗じて計算した断面積の平均と標準偏差を計算しました。また、重回帰分析を行いました。
甲状腺断面積は左葉より右葉が大きい結果となりました。女性では12歳頃、男性では14歳頃まで増加傾向を示し、その後増加傾向は鈍化します。体表面積でみてみると体表面積の増加に伴い甲状腺断面積も増加傾向を示しました。また、重回帰分析により性別・年齢・体表面積は甲状腺各葉の断面積に独立に影響していることが明らかになりました。
本法は、小児・青年期の甲状腺容積を推定し、甲状腺の萎縮、甲状腺腫などの診断に利用できることが期待されます。
書誌情報
タイトル | Ultrasonography-based reference values for the cross-sectional area of the thyroid gland in children and adolescents: The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
江尻遥香1、浅野眞比呂1、中畑那奈1、鈴木聡1, 2、佐藤綾子1、長嶺夏希1、髙橋智里1, 8、山谷幸恵1、岩舘学3、松塚崇4、大平哲也1, 5、安村誠司1, 6、鈴木悟1, 7、古屋文彦1, 2、志村浩己1, 8、鈴木眞一9、横谷進10、大戸斉1、神谷研二1, 11 |
掲載誌 | Clin Pediatr Endocrinol. 2023;32(1):52-57. |
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