研究・論文

甲状腺検査

Prevalence of thyroid nodular lesions in children and adolescents

小児および若年者における甲状腺結節性病変の有病率

要約

これまでの福島県の放射線量に関する研究結果より、同県における放射線関連の甲状腺がん発症リスクは、チェルノブイリにおける事故でのものと比較し、極めて低いであろうことが示唆されています。しかし、福島県民の長期的な健康状態を見守るために、甲状腺検査を含む福島県「県民健康調査」が開始されました。
甲状腺超音波検査による結果の適切な解釈には、小児および若年者における甲状腺結節とがんの正確なベースライン有病率が必要とされています。本論文では、子供及び青年の甲状腺結節性病変を研究したいくつかの報告を再検討しましたが、疫学的データが依然として不十分であることは明白です。さらに、超音波診断技術における最近の進歩は、甲状腺嚢胞、結節およびがんの検出率向上をもたらす可能性があります。
甲状腺がんの診断に関する戦略の変遷もまた、甲状腺がんの有病率と発症率を変化させる可能性があります。小児甲状腺がんの発症率の増加がチェルノブイリ原子力事故の4~5年後に認められたことから、今後数十年にわたる福島県での甲状腺超音波検査による結果を正確に解釈するためには、4~5年以内に厳密な質的な管理の下で高度に標準化されたプロトコルによる甲状腺超音波診断検査を実施することが極めて重要です。

書誌情報

タイトル Prevalence of thyroid nodular lesions in children and adolescents
著者

志村浩己1)、鈴木眞一2)、福島俊彦2)、緑川早苗3)、鈴木 悟2)、林田直美5)、今泉美彩7)、大久保礼由8)、浅利靖9)、二川原健10)、古屋文彦11)、小谷和彦12)、中路重之8)、大津留晶3)、赤水尚史13)、貴田岡正史14)、高村昇5)、阿部正文4)、大戸斉4)、谷口信行12)、山下俊一4),6)
1)福島県立医科大学医学部臨床検査医学講座、2)福島県立医科大学医学部甲状腺内分泌学講座、3)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、4)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、5)長崎大学原爆後障害医療研究所 国際保健医療福祉学研究分野、6)長崎大学原爆後障害医療研究所 放射線災害医療学研究分野、7)放射線影響研究所 臨床研究部、8)弘前大学大学院医学研究科社会医学講座、9)弘前大学大学院医学研究科救急・災害医学講座、10)弘前大学大学院医学研究科内分泌代謝内科学講座、11)山梨大学大学院医学工学総合研究部 内科学講座第3教室、12)自治医科大学医学部臨床検査医学講座、13)和歌山県立医科大学医学部内科学第一講座、14)公立昭和病院内分泌・代謝内科

掲載誌 Fukushima Journal of Medical Science. 2014;60(2):196-202.
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