研究・論文
The association between self-reported sleep dissatisfaction after the Great East Japan Earthquake, and a deteriorated socioeconomic status in the evacuation area : the Fukushima Health Management Survey.
東日本大震災の避難住民における自己報告による睡眠障害と社会経済状況の悪化との関連について:福島県「県民健康調査」
要約
本研究は、福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターにおいて平成23年度に避難区域を対象として集積した福島県「県民健康調査」の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」を用い、自己報告による睡眠障害と社会経済要因との関連を検討することを目的としました。 福島県内の避難区域13市町村で東日本大震災以前に住民登録があり、平成23年度の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に回答した7万3,433名の方から結果を得ました。そのうち、 20歳未満の人と睡眠満足度に対する答えがない人を除外し、残りの56,774名(男性24,959名、女性31,815名)が最終の分析対象となっています。
睡眠満足度について、アンケート調査により、「とても満足」、「満足」、「やや不満」、「かなり不満」の選択肢のうち、「やや不満」「かなり不満」と答えた対象者を「睡眠障害あり」としました。社会経済要因は、親戚宅または自宅、借家、避難所または仮設住宅のカテゴリーに分けた住居状況、教育歴、及び震災により失業と減収を指標として用いました。修正ポアソン回帰モデルにより、睡眠障害を有する危険度(PR)と95%信頼区間(CI)を算出しました。
その結果、避難住民において、20.3%(男性4,387名、女性7,128名)が「睡眠障害あり」となりました。
親戚宅または自宅に住んでいる人(PR=1.00)に比べ、避難所または仮設住宅に住んでいる人の睡眠障害の危険度は男性では1.47倍(95%CI:1.44-1.50)、女性では1.39倍(95%CI:1.36-1.41)でした。借り家に住んでいる人の睡眠障害の危険度は男性では2.16倍(95%CI: 2.07-2.26)、女性では1.92倍 (95%CI:1.86-1.99)で、すべて有意に上昇しました。
それに加えて、男性における、高学歴も睡眠障害リスクの上昇に有意に関連し、男女における、震災により失業および収入減少も睡眠障害の危険度の上昇に有意に関連しました。
以上より、震災後、避難住民において、社会経済状況が悪化していると、睡眠障害を有する危険度が高くなることが分かりました。今後、さらなる縦断研究も必要となります。
書誌情報
タイトル | The association between self-reported sleep dissatisfaction after the Great East Japan Earthquake, and a deteriorated socioeconomic status in the evacuation area : the Fukushima Health Management Survey. |
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著者 |
章ぶん1)、大平哲也1),2)、前田正治2),3)、中野裕紀1),2)、岩佐一2),4)、安村誠司2),4)、大津留晶2),5)、針金まゆみ2)、鈴木友理子6)、堀越直子2)、高瀬佳苗7)、高橋敦史8)、矢部博興2),9)、神谷研二2),10) |
掲載誌 | Sleep Med. 2020 Apr;68:63-70. |
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