研究・論文
甲状腺検査
Thyroid Cancer Screening Program for Young People in Fukushima After the Nuclear Power Plant Accident
原発事故後の福島における若年者に対する甲状腺がんスクリーニングプログラム
要約
2011年の東日本大震災と福島第一原発事故後による健康課題に対応して、福島県「県民健康調査」が始まり、その調査の一つとして、甲状腺検査が行われてきました。甲状腺検査は、2つのステップからなり、一つは甲状腺超音波でスクリーニングを行う一次検査で、二つ目は一次検査の結果により精密な2次検査となった場合で、症例によっては細胞診検査も行われます。
2015年度までに行われた2回の甲状腺検査で、計187名が細胞診の結果、悪性ないしは悪性疑いの診断を受けました。その中で術後病理検査の結果が分かった症例においては、149名が甲状腺乳頭がん、1名が良性結節、1名が低分化がん、1名がその他の甲状腺がんでした。超音波による甲状腺がんスクリーニングを行わない一般的な状況と比較すると、非常に多い甲状腺乳頭がんが発見されました。予測されている甲状腺被ばく線量がとても低いことや、その他の状況と一般的なリスクファクターなどから考えると、放射性誘発甲状腺がんによる症例の増加ではなく、過剰診断もしくは超早期発見による発見数の増加の可能性が高いと考えられます。
書誌情報
タイトル | Thyroid Cancer Screening Program for Young People in Fukushima After the Nuclear Power Plant Accident |
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著者 |
大津留晶1),2)、緑川早苗1),2)、鈴木悟2)、志村浩己2),3)、松塚崇2),4)、山下俊一5) |
掲載誌 | Thyroid FNA Cytology 2nd Ed. Chap 68:519-523. K. Kakudo (ed.), Springer Nature Singapore Ptc Ltd. 2019. |
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