研究・論文
Prevalence and Characterization of Thyroid Hemiagenesis in Japan : The Fukushima Health Management Survey
日本における甲状腺片葉欠失バリアントの頻度とその特色:福島県「県民健康調査」から
要約
緒言:甲状腺片葉欠失バリアント(以下片葉バリアント)は特に無症状で、甲状腺の片葉が欠失するまれな先天的バリエーションです。臨床的症状や所見がないため、甲状腺や、耳鼻咽喉学的疾患、あるいは頸部に関連する疾患として、超音波検査施行時に偶然見つかります。片葉バリアントの最初の報告は1866年、ハンドフィールド・ジョーンズによるものです。 系統的な甲状腺超音波による健常小児の片葉バリアントの頻度は、最初にベルギーで0.2%と報告されました。今回超音波を用い片葉バリアントの頻度を算出し、日本における特色を紹介します。
対象:福島県「県民健康調査」甲状腺検査で平成23年10月~平成27年4月まで行われた先行検査における震災時0-18歳の男女29万9,908例。
結果:片葉バリアントの割合は全体で0.022%(67名)でした。そのうち左葉のバリアント(55名)が右葉のバリアント(12名)より有意に多いことが分かりました (p<0.001)。左葉のバリアントには性差を認めませんでしたが、右葉のバリアントは女性で有意に多いことが分かりました (p=0.018)。体表面積で補正した甲状腺の大きさは、片葉バリアントの症例で存在する片葉としては、両葉保有者の同側片葉よりも有意に大きいことが分かりました (p<0.001)。
結論:片葉バリアントの割合は、他国の報告(0.02-0.25%)とほぼ同等か低い頻度となりました。全体では男女差はありませんでした。両葉とも反対側が代償的に大きくなっていました。これらの知見は、これからの小児甲状腺診療の一助になると考えられます。
書誌情報
タイトル | Prevalence and Characterization of Thyroid Hemiagenesis in Japan : The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
鈴木悟1),2)、緑川早苗2),3)、松塚崇2),4)、福島俊彦5)、伊藤祐子2),6)、志村浩己2),6)、高橋秀人2)、大平哲也2),7)、大津留 晶2),3)、阿部正文2)、鈴木眞一2),5)、山下俊一2),8) |
掲載誌 | Thyroid. 2017 Aug;27(8):1011-1016. |
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