研究・論文
東日本大震災後における生活習慣病のリスクがある避難者への電話支援による調査票への回答および医療機関受診の効果:福島県「県民健康調査」
東日本大震災後における生活習慣病のリスクがある避難者への電話支援による調査票への回答および医療機関受診の効果:福島県「県民健康調査」
要約
福島県立医科大学では、福島県からの委託を受け、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射線の健康影響を踏まえ、将来にわたる県民の健康管理を目的とした福島県「県民健康調査」を毎年実施しています。そのうち、平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病)に対し、看護師・保健師等が実施した電話支援の効果、特に次年度の調査票への回答および医療機関受診の勧奨効果を明らかにすることを目的としました。
平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病) 1,620人をベースラインデータとし、平成24年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果との関連を縦断的に検討しました。
平成23年度の生活習慣支援対象者で、電話支援を実施した方(以下、電話支援者)は1,078人、電話番号の未記載や留守等で電話支援を実施しなかった方(以下、電話未支援者)は542人でした。単変量解析の結果、電話支援実施の有無で、居住場所(p=0.001)、教育歴(p<0.001)、就業状況(p<0.001)に違いがみられました。平成24年度調査票への回答者数は、電話支援者が616人(57.1%)、電話未支援者が248人(45.8%)であり、電話未支援者に比べ電話支援者の平成24年度調査票回答率は高く、統計的に有意でした(p<0.001)。また、平成24年度調査票への回答の中で、医療機関に受診したと記載のあった者は、電話支援者が184人(29.9%)、電話未支援者が68人(27.4%)であり、電話未支援者に比べ電話支援者の受診者の割合は高かったが、統計的に有意差はありませんでした。
多変量解析の結果、平成24年度調査票への回答には、電話支援を受けた方であること(p=0.016)が有意に関連しました。
電話支援者は電話未支援者に比べ、次年度の調査票回答率が有意に高く、電話支援の取り組みは、調査票回答率の向上に有効であると考えられます。
書誌情報
タイトル | 東日本大震災後における生活習慣病のリスクがある避難者への電話支援による調査票への回答および医療機関受診の効果:福島県「県民健康調査」 |
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著者 |
堀越直子1),2)、大平哲也1),3)、安村誠司1),2)、矢部博興1),4)、前田正治1),5) |
掲載誌 | 日本公衆衛生雑誌 64 巻 (2017) 2 号 |
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