研究・論文

基本調査

EXTERNAL AND INTERNAL EXPOSURE TO FUKUSHIMA RESIDENTS

福島県住民に対する外部および内部被ばく

要約

本論文では、東京電力福島第一原発事故後に県民が受けた外部被ばく、内部被ばく線量に関する概要を報告しています。
福島県「県民健康調査」では基本調査として、事故後4か月間の外部被ばく線量を評価してきました。46万人程度の線量推計が終了した段階では、1mSv未満の方が66.3%、2mSv未満の方が94.9%、5mSv 未満の方が99.7%となっています。原発に最も近い相双地域でも、78%の方が1mSv未満であり、平均は0.7mSvでした。
事故後4か月以降の外部被ばくに関しては、福島県内の多くの自治体で個人線量計を用いた測定が行われています。例えば福島市では、2011年9月1日から11月30日までに最初の測定が行われ、87.2%の住民が0.5mSv未満、0.5mSvから1.0mSvの方が 12.5%、1mSv から3mSvの方が0.3%という結果であり(線量の数値はいずれも年間に換算した値)、中央値は年間換算で0.8mSvと評価されました。県内の22市町村からの評価結果では、すべての市町村で年間換算した線量の中央値は1mSv未満でした。
内部被ばくに関しては、ホールボディカウンタを用いた検査が2011年6月から行われており、 2014年2月までに18万人以上の住民の測定が行われました。その時点までに得られた結果では、 99.986%の方についてセシウムによる内部被ばく線量は1mSv未満でした。食品中のセシウム濃度に関しても検査、報告がされています。2011年11月から2012年3月まで、県内の100家族から日常食サンプルを集めて分析したところ、10家族のサンプルからセシウムが検出されましたが、最高値は6.7Bq/kgでした。2012年6月から9月にかけても同様の調査が行われましたが、セシウムが検出されたのは2家族のサンプルのみでした。セシウム濃度の最高値は1.9Bq/kgでしたが、この食事を仮に1年間取り続けたとしても内部被ばく線量は0.037mSvと評価されます。
甲状腺の内部被ばくに関しては、事故直後に1,080人の子供のスクリーニング検査が行われました。検査は簡易な測定器を使用したものでしたが、甲状腺の内部被ばく線量で50mSvを超える方はいなかったと評価されています。浪江町からの避難者に関する測定では、より精密な測定器を用いて調査が行われましたが、成人に関する甲状腺内部被ばく線量の中央値として3.5mSv、子供に関しても4.2mSvという結果が報告されています。

書誌情報

タイトル EXTERNAL AND INTERNAL EXPOSURE TO FUKUSHIMA RESIDENTS
著者

神谷研二1),2)、石川徹夫2),3)、安村誠司2),3)、坂井晃2),3)、大平哲也2),3)、高橋秀人2)、大津留晶2),3)、鈴木眞一3)、細矢光亮2),3)、前田正治2),3)、矢部博興2),3)、藤森敬也2),3)、山下俊一2),4)、大戸斉2),3)、阿部正文2)
1)広島大学原爆放射線医科学研究所、2)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、3)福島県立医科大学医学部、4)長崎大学原爆後障害医療研究所

掲載誌 Radiat Prot Dosimetry. 2016;171(1):7-13.
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