研究・論文
After Fukushima: Addressing anxiety (letter)
放射線災害後の福島で:不安に向き合う(letter)
要約
2016年3月4日号のサイエンス誌に「Epidemic of fear(不安の流行)」という記事が掲載された。福島第一原発事故後の甲状腺超音波検査についてD.Normile氏が、小児の甲状腺がんの自然史が不明のままに、甲状腺がんが多数発見され過剰診療になっている可能性について述べています。
まだ明らかでないことが多い中で、福島の住民は甲状腺検査の結果と放射線被ばくを直接的に関連づけて考える傾向があります。多くの住民は事故直後自分がとった行動(例えば避難したのかしなかったのか、子供をどこで遊ばせたか、子供にどんなものを食べさせたかなど)と、超音波検査で発見される結節性病変が関係していると考えがちです。特に母親は検査の結果に新たな不安を持ち、それが自責感へとつながっています。このような状況に対応するために私たちが取り組んでいることを二つ紹介します。
一つ目は、通常健診での結果は文書で通知されますが、検査直後に一人一人に結果を直接説明する取り組みです。その目的は検査の結果に関する不安を取り除き、放射線と健康リスクに関する漠然とした懸念に対応し、甲状腺スクリーニングの意味を説明することにあります。
二つ目は検査の対象者である子供達に対しての甲状腺検査についての出前授業の取り組みです。出前授業では、放射線と甲状腺検査の関係や検査結果の解釈について説明しています。検査を受けるかどうかの意思決定はしばしば子供たち自身よりも、保護者の不安を反映しています。出前授業を通して、私たちはスクリーニングのメリットデメリットについて考えたり、放射線の健康リスクに関して両親と話をする機会を、子供たちに提供しようと考えています。
書誌情報
タイトル | After Fukushima: Addressing anxiety (letter) |
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著者 |
緑川早苗1),2)、鈴木悟1),3)、大津留 晶1),2) |
掲載誌 | Science. 2016 May 6;352(6286):666-7. |
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