研究・論文
A brief review of dose estimation studies conducted after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident
福島第一原発事故後に行われた線量評価研究の簡単なレビュー
要約
原発事故が起こって以来、事故由来の線量の評価に関して多くの論文が発表されてきました。
一般に線量評価は、様々なパラメータや仮定を必要とします。例えば内部被ばくであれば経口摂取の様式(1回摂取または連続摂取)、外部被ばくであれば屋内外の滞在時間です。このようなパラメータが不明の場合には、パラメータを仮定して線量評価が行われます。線量評価の手法が違えば推計される線量も違ってきますが、同一の線量評価手法でもこれらの仮定が異なれば、推計される線量が異なってきます。このことは、たびたび一般の方に対し誤解を引きおこしたり混乱を与えたりしていると思われます。この論文では、事故による一般公衆の内部および外部被ばく線量について,線量評価の手法や用いられた仮定に関する情報と一緒にレビューを行いました。
外部被ばく線量評価の方法として、大きく分けて個人線量計を用いる方法と空間線量率から屋内外滞在時間を仮定して個人線量を評価する方法があります。事故後初期については個人線量計が使用できなかったこともあり、屋外の空間線量率をもとに1日中屋外にいると仮定して、あるいは1日のうち屋内16時間、屋外8時間滞在すると仮定して、外部被ばく線量を評価する方法が多く用いられました。
これに対して基本調査では、住民の実際の行動記録(屋内外滞在時間等)をもとに事故後4か月間の外部被ばく線量を評価するもので、空間線量率をもとにした外部被ばく線量評価よりも精度が高くなりうるものと考えています。基本調査で評価された4か月間の外部被ばく線量の最大値は25mSvという結果が出ている一方で、浪江町からの避難者について空間線量率をもとに外部被ばく線量を評価した論文では、1年間の線量として最大約60mSvという試算がされています。これは、浪江町の居住地域で空間線量率が最大であった場所に2か月間滞在した(1日あたり屋内16時間、屋外8時間滞在)後に避難するという仮定に基づいているため、基本調査による最大線量と大きな違いが生じたものと考えられます。
このように線量推計の手法が異なったり、手法が同じでも用いられるパラメータが違ったりすれば、推計される線量も異なってきます。保守的な仮定を用いて評価した線量は一般に過大評価となります。線量推計結果を公表する際には、どのような仮定に基づいたかを一緒に伝えることが重要であると考えられます。
書誌情報
タイトル | A brief review of dose estimation studies conducted after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident |
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著者 |
石川徹夫1),2) |
掲載誌 | Radiation Emergency Medicine. 2014;3(1):21-27. |
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