研究・論文
Hypo-high-density Lipoprotein Cholesterolemia Caused by Evacuation after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident : Results from the Fukushima Health Management Survey
福島第一原子力発電所事故後の避難は、低 HDLコレステロール血症の危険因子の一つである:福島県「県民健康調査」結果から
要約
目的:東日本大震災と福島第一原子力発電所事故は、住民の避難を余儀なくし、避難者のライフスタイルに多くの変化をもたらしました。生活習慣病予防のために定期健康診断が実施されていますが、我々は災害前後の善玉コレステロールであるHDLコレステロール値の変化を分析しました。
方法:震災以前に住民登録があった者のうち、平成20〜22年において少なくとも1回以上特定健診(および後期高齢者健診)を受診した40歳以上の男女41,633人(男性18,745人、女性22,888人、平均年齢66.9歳)をベースラインデータとし、平成23年度、平成24年度の健診を受診した者を追跡調査実施者として解析対象とし、震災前後のHDLコレステロール値への影響の変化を分析しました。
結果:総数27,486人に対し、災害後平均1.6年間の追跡調査を実施しました。災害後、低HDLコレステロール血症の有病率は6.0%から7.2%と大幅に増加しました。低HDLコレステロール血症の男性では、肥満度指数(BMI)、血圧、およびLDLコレステロール値が、災害後に有意に増加しました。
一方HDLコレステロール値が正常な群では、BMI、血圧、血糖値、脂質代謝、および肝機能が悪影響を受けました。HDLコレステロール値の低下は、HDLコレステロール値が正常な群において、非避難者に比べ、避難者で有意に大きくなっていました。さらに、多変量ロジスティック回帰分析では、避難が有意に低HDLコレステロール血症の発症と関連することを示しました。
結論:本論文は、避難が低HDLコレステロール血症の発生に影響を与え、心血管疾患の増加につながる可能性を示唆した最初の研究です。この情報は、避難者のフォローアップの重要性を示唆しています。
書誌情報
タイトル | Prevalence of Renal Dysfunction among Evacuees and Non-evacuees after the Great East Earthquake : Results from the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
佐藤博亮1),2)、大平哲也2),3)、永井雅人2),3)、細矢光亮2),4)、坂井晃2),5)、渡辺毅1),2)、大津留晶2),6)、川崎幸彦2),4)、鈴木均2),7)、高橋敦史2),8)、小橋元9)、小笹晃太郎10)、安村誠司2),11)、山下俊一2),12)、神谷研二2),13)、阿部正文2) |
掲載誌 | Internal Medicine. 2016;55(15):1967-76. |
関連リンク |