研究・論文
A comprehensive analysis of clinical factors interacting with ectopic intrathyroidal thymus in children and adolescents: The Fukushima Health Management Survey
小児若年者における甲状腺内異所性胸腺の臨床的因子にかかわる包括的検討:福島県「県民健康調査」
要約
背景
胸腺は小児期の免疫において重要な役割を果たします。胎生期に頸部に発生しますが、その後尾側に下降していき最終的に前縦隔に移動します。この過程で一部甲状腺内に迷入する胸腺があり、これを甲状腺内異所性胸腺と呼びます。甲状腺内異所性胸腺の超音波画像は甲状腺乳頭癌の超音波画像に似ており、両者を見分けることは臨床上重要なことです。事実、診断が難しく不要な検査や手術が行われたという報告もみられています。
私たちは以前、福島県「県民健康調査」甲状腺検査開始当初に超音波検査を受けた37,816人において、甲状腺内異所性胸腺の発生率は約1%であることを報告しました。しかし、甲状腺の大きさやのう胞、結節などの臨床的因子との関連については検討を行っていませんでした。今回、対象とする人数を増やし、甲状腺内異所性胸腺の発生率と臨床的因子との関連について検討を行いました。
対象
福島県「県民健康調査」甲状腺検査の検査3回目までに一次検査を受診した1~23歳までの318,903人を対象とし、甲状腺内異所性胸腺発生率や、BMI(body mass index)や甲状腺の大きさ、のう胞や結節との関連について調べました。
結果
甲状腺内異所性胸腺の発生率は3.2%でした。男性に多く認められ、男女とも4歳をピークとし、以後は年齢が進むとともに見られなくなっていました。また、甲状腺が小さい、BMIが低い、結節を認める場合に発生率が高くなり、のう胞を認める場合には発生率が低くなっていました。
結論
小児若年者において異所性胸腺は決して稀な所見ではないことが分かり、またその臨床的因子との関連について新たな知見を得ることができました。今回の知見は甲状腺内異所性胸腺を診断する際に有用であり、不要な検査や手術の回避に寄与することが期待されます。
書誌情報
タイトル | A comprehensive analysis of clinical factors interacting with ectopic intrathyroidal thymus in children and adolescents: The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
鈴木聡1, 2、長尾匡則1, 3、長嶺夏希1、小橋友理江1, 4、 岩舘学1, 5、 松塚崇1、 大平哲也1, 3、 鈴木悟1, 6、 古屋文彦1, 2、 志村浩己1, 4、 鈴木眞一2, 7、 横谷進1、 山下俊一8、 大戸斉1、 安村誠司1 |
掲載誌 | Endocr J. 2025 Sep 3. |
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