研究・論文
Model-based estimation of thyroid cancer incidence from ultrasound examinations in the Fukushima Health Management Survey: estimated results considering the non-examinees in the first, second and third rounds of the cohort study
福島県「県民健康調査」における甲状腺がん発見数のモデルベース推定:第1~3回目検査での未受診者を考慮した推定結果
要約
福島県「県民健康調査」における第1回目から第3回目までの甲状腺検査において、未受診者の割合と対象者の特性との関係を評価するモデルを構築し、このモデルを用いて各検査回における未受診者を考慮した対象者全体における甲状腺がん発見数の推定を試みました。
対象者は、事故当時に福島県に居住し、住民基本台帳に基づき登録された18歳以下の363,342人のうち、各検査回で受診対象となった方としました。本研究で構築した受診・未受診の識別モデルは、ROC曲線下面積(AUC)が0.815〜0.905と高い精度を示しました。
第1回目、第2回目、第3回目検査における受診者数はそれぞれ294,921人、258,771人、208,955人であり、観察された甲状腺がん発見数は115例、70例、30例でした。これに対し、未受診者を含む対象者全体におけるモデルによる推定発見数は、それぞれ177.3例(95%信頼区間:167.0〜188.0)、126.3例(95%信頼区間:106.3〜150.2)、49.7例(95%信頼区間:35.8〜71.9)となりました。これらの推定値は、未受診者を考慮することで、実際に観察された発見数よりも高い値となりましたが、本研究で構築した受診状況を識別するモデルの精度は高く、未受診の要因を適切に捉えているものと考えられました。
本研究の知見は、未受診者の中に潜在する甲状腺がんの発見数を考慮するための有用な情報を提供し、甲状腺検査の結果の解釈や将来の調査の管理・運営に資するものだと考えます。
書誌情報
タイトル | Model-based estimation of thyroid cancer incidence from ultrasound examinations in the Fukushima Health Management Survey: estimated results considering the non-examinees in the first, second and third rounds of the cohort study |
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著者 |
髙橋邦彦1, 2、安村誠司2, 3、高橋秀人2, 4、中谷友樹2, 5, 6、安齋達彦1, 2、大平哲也2, 7、志村浩己2, 8、鈴木悟2, 9、鈴木聡2, 10、岩舘学2, 10, 11、横谷進2, 9、大戸斉2、神谷研二2, 12 |
掲載誌 | BMJ Open. 2025 Jun 4;15(6):e084885. |
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