研究・論文
Merging of the Fukushima Health Management Survey With the National and Local Cancer Registry to Refine the Detection of Thyroid Cancer Cases After the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident
がん登録と福島県「県民健康調査」のデータ突合により福島第一原子力発電所事故後の甲状腺がん症例の検出精度を向上させる
要約
背景:2011年の福島第一原子力発電所事故後、福島県では将来にわたる県民の健康の維持、増進を図るために福島県「県民健康調査」(FHMS)を開始しました。FHMSでは、事故当時18歳以下の住民を対象に甲状腺超音波検査が行われました。しかしFHMSでは、検査後に診断されたすべての甲状腺がんの症例を捉えられていない可能性が指摘されていました。そこで本研究では、FHMSの情報を全国および福島県がん登録データ(CR)と突合し、FHMSとCRによる甲状腺がんの症例把握の限界を明らかにすることを目的としました。なお、がん登録制度は都道府県ごとに把握していた2015年以前と全国で把握できるようになった2016年以降でデータの収集方法に違いがあります。
方法:FHMS対象者の情報を、福島県がん登録(FPCR、2008~2015年)および全国がん登録(NCR、2016~2018年)のデータと突合しました。登録された症例は、CRとFHMSの両方に登録された症例、CRのみに登録された症例、FHMSのみに登録された症例の3つのグループに分類し、それぞれのグループの特徴を評価しました。
結果:FHMSでは2018年までに212例の甲状腺がんが確認され、CRではそれに加えて42例の甲状腺がんが確認されました。2015年までに登録された176件の甲状腺がんのうち、28件(15.9%)はFHMSのみに登録されており、13件(7.4%)はFPCRのみに登録されていました。2016年以降に確認された78例のうち、29件(37.2%)はNCRのみに登録されており、6件(7.7%)はFHMSのみに登録されていました。この結果CRとしては、NCRはFPCRよりも効率的に診断症例を捉えていることが示されました。
結論:福島第一原発事故後の甲状腺がん症例をより正確に把握するためには、FHMSとCRのデータを個別に突合することが必要であることが示唆されました。
書誌情報
タイトル | Merging of the Fukushima Health Management Survey With the National and Local Cancer Registry to Refine the Detection of Thyroid Cancer Cases After the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident |
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著者 |
木村礼子1、長尾匡則2, 3、佐治重衡1, 2、林史和2, 3、大平哲也2, 3、志村浩己2, 4、古屋文彦2, 3、鈴木悟2, 5、鈴木聡2, 5、石川徹夫2, 6、横谷進2、大戸斉2、安村誠司2 |
掲載誌 | Cancer Med. 2025 Feb;14(3):e70610. |
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