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健康診査

Association between evacuation and becoming overweight after the Great East Japan Earthquake: a 7-year follow-up of the Fukushima Health Management Survey

東日本大震災後の避難と肥満発生との関連:福島県「県民健康調査」による7年間の追跡研究

要約

【背景と目的】避難生活は生活環境の変化や心理社会的要因により、肥満になるリスクを高めます。これまでにも福島県「県民健康調査」では、震災前に比べて震災後に体重や腹部肥満が増加していたことを報告しています。本研究では「県民健康調査」に参加された方のうち、2011年の時点では肥満でなかった方を対象として、避難経験による肥満のなりやすさを調べるとともに、どのような因子が肥満発生に影響していたのかを心理社会的要因を含めて検討しました。
【方法】本研究は、ベースライン(2011年7月から2012年11月)の間に、「県民健康調査」の「健康診査」と「こころの健康度・生活習慣に関する調査(ここから調査)」の両方に参加した39~89歳の方のうち、肥満でなかった方を対象とした追跡研究です。肥満とはBody mass index (BMI)が25kg/m²以上と定義しました。また避難とは震災時に避難区域等に指定された地域にお住まいであったこと、またはここから調査で「避難所・仮設住宅での居住経験がある」と回答されたことと定義しました。対象となった方が2018年3月までに受診された「健康診査」の結果に基づいて新たな肥満発生の有無を確認し、避難経験を含む生活習慣や心理社会的要因との関連をCox比例ハザードモデルにより解析しました。
【結果】平均4.29年の追跡期間中に、15,875人の参加者(男性6,091人、女性9,784人、平均年齢63.0±11.1歳)から、2,042人(男性856人、女性1,186人)で新たに肥満発生が確認されました。避難を経験した方が肥満になるリスクは、避難していない人に比べて有意に高いことが示されました。年齢、ベースラインのBMI、ライフスタイル、および心理社会的要因で調整したハザード比(95%信頼区間)は、男性で1.44(1.24-1.66)、女性で1.66(1.47-1.89)でした。また避難を経験した方において、喫煙していることや放射線による健康不安を感じていることは肥満のなりやすさを高める傾向が見られましたが、一方で運動習慣や睡眠に満足していることは肥満になりにくいことと関連していました。
【結論】避難経験は、震災後においても肥満になるリスクと関連していました。したがって、身体活動、健康的な食事、睡眠の質を維持し、放射線に対する不安などの健康的な行動への障壁を取り除くことで、避難された方の健康低下を防ぐことができる可能性があります。

書誌情報

タイトル Association between evacuation and becoming overweight after the Great East Japan Earthquake: a 7-year follow-up of the Fukushima Health Management Survey
著者

長尾匡則1, 2、岡崎可奈子1, 2, 3、大平哲也1, 2、中野裕紀1, 2、林史和1, 2、島袋充生1, 4、坂井晃1, 5、細矢光亮1, 6、風間順一郎1, 7、高橋敦史1, 8、前田正治1, 9、矢部博興1, 10、大戸斉1、神谷研二1, 11、安村誠司1, 12
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部疫学講座、3 福島県立医科大学保健科学部理学療法学科、4 福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座、5 福島県立医科大学医学部放射線生命科学講座、6 福島県立医科大学医学部小児科学講座、7 福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科、8 福島県立医科大学医学部消化器内科学講座、9 福島県⽴医科⼤学医学部災害こころの医学講座、10 福島県立医科大学こころと脳の医学講座、11 放射線影響研究所、12 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

掲載誌 Public Health. 2024 Jul:232:170-177.
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