研究・論文
Prevalence of thyroid diffuse goiter and its association with body mass index and the presence of cysts and nodules in children and adolescents: the Fukushima Health Management Survey
小児および青少年における甲状腺びまん性甲状腺腫の有病率と体格指数(BMI)、嚢胞および結節の存在との関連:福島県「県民健康調査」
要約
福島県「県民健康調査」甲状腺一次検査では超音波機器で結節嚢胞有無の主所見の他、甲状腺の大きさ、びまん性甲状腺腫の有無について記録しています。びまん性甲状腺腫の代表的な原因疾患は自己免疫性甲状腺炎すなわち橋本病です。成人においては、40歳から50歳台の女性に多く補充療法が必要な場合があります。一方、小児・青年期では橋本病の頻度やその臨床的背景はよく知られていません。今回、小児・青年期におけるびまん性甲状腺腫の頻度や身長、体重、体格指数(BMI)、甲状腺容積(BWTAR)、 嚢胞および結節との関係について評価しました。
【方法】「甲状腺検査」の一次検査を受診していただいた方のびまん性甲状腺腫の有無について年齢、性別による頻度を算出し、年齢を4群に分けて解析しました。BMIとBWTARは性、年齢、体表面積で違うので、それぞれをBMI-SDS, BWTAR-SDSとして標準化しました。ロジスティック解析を使用して、性別、年齢、BMI-SDS、BWTAR-SDS、嚢胞および結節の有無とびまん性甲状腺腫の関係を調べました。
【結果】びまん性甲状腺腫の有病率は年齢とともに上昇し女性で高い傾向が見られました。年齢および性別で調整し、びまん性甲状腺腫がある場合のない場合に対するオッズ比は、BMI-SDS 1.24、BWTAR-SDS 3.21、結節有1.38、嚢胞有0.53でした。結節のオッズ比は、1~7歳4.18、8~11歳1.76、12~15歳1.80、16~23歳1.34でした。いずれも有意でした。
【考察】びまん性甲状腺腫の頻度は男女ともに年齢に応じて徐々に増加する可能性があることが示唆されました。びまん性甲状腺腫の頻度とBMIは、男女ともに正の相関が見られました。このことは、小児期において、肥満が自己免疫性甲状腺疾患を増加させる可能性があることを示唆します。嚢胞の減少とびまん性甲状腺腫の頻度上昇が関連していました。可能性として、びまん性甲状腺腫における嚢胞検出感度の低下が一因と挙げられますが、嚢胞形成がびまん性甲状腺腫の発生を抑制するか、逆にびまん性甲状腺腫が嚢胞の発生を減少させる可能性もあります。また、若年であるほど結節とびまん性甲状腺腫により強い相関が示されました。
【結論】小児・青年期におけるびまん性甲状腺腫の頻度と特徴を明らかにしました。また、BMIの上昇とびまん性甲状腺腫には正の関係があり、嚢胞の減少と結節の増加はびまん性甲状腺腫に関与している可能性があります。
書誌情報
タイトル | Prevalence of thyroid diffuse goiter and its association with body mass index and the presence of cysts and nodules in children and adolescents: the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
中畑那奈1、浅野眞比呂1、阿部紀和1、江尻遥香1、太田寿1、鈴木聡1, 2、佐藤綾子1、田﨑里奈1、長嶺夏希1、髙橋智里1, 3、山谷幸恵1、岩舘学4、松塚崇5、大平哲也1, 6、安村誠司1, 7、鈴木悟1, 8、古屋文彦1, 2、志村浩己1, 3、鈴木眞一9、横谷進1、大戸斉1、神谷研二1 |
掲載誌 | Endocr J. 2024 Apr 30;71(4):383-393. |
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