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健康診査

Blood data trends of children in Fukushima after the Great East Japan Earthquake: Fukushima health management survey

東日本大震災後の避難地域における15歳以下の小児の末梢血データの2011年から2018年までの経年変化:福島県「県民健康調査」

要約

【背景】2011年3月11日に東日本大震災、そして東京電力第一原子力発電所事故が発生しました。震災後間もなく、国は避難地域を設定しました。また福島県民の多くは震災時の状況、被災後の生活環境の変化、特に原子力発電所事故後の放射性物質の拡散による放射線被ばくによる健康への不安がありました。福島県は県民の健康を見守るため「県民健康調査」を開始し、特に避難地域の全年齢の住民を対象に健康診査を実施してきました。今回、健康診査による15歳以下の小児の末梢血液中の血球成分(白血球、赤血球、血小板)の震災発生以降の経年変化から、東日本大震災、そして東京電力第一原子力発電所事故の長期的な健康影響を検討しました。
【方法】避難地域の15歳以下の小児のうち受診したのべ71,250人について、2011年から2018年までの健康診査の結果を解析しました。貧血や多血の判断に関しては赤血球の検査値からヘモグロビン(Hb)の値を使用しました。また、血球成分の基準値は小児では年齢ごとに異なるため、年齢を1歳未満、1歳から4歳、5歳から10歳、11歳から15歳の4つのグループに分け、さらに男女を分けて解析しました。
【結果・結論】白血球数、Hb値、血小板数において、わずかな増減は認められましたが、全ての平均値はこれまで報告されている基準範囲内にあり、また検査値の分布中央の95%区間もこれまでの基準範囲とほぼ同じでした。特に栄養・ストレス状態を含む生活環境の変化や血液疾患による貧血、多血、そして白血球数の増多・減少の目安値を外れる割合において経年的増加は認められませんでした。本検討の限界の1つとして放射線被ばくの影響ついて解析していない点が挙げられます。したがって、放射線被ばくと生活環境による影響を含めて様々な因子を今後も検討する必要があります。

書誌情報

タイトル Blood data trends of children in Fukushima after the Great East Japan Earthquake: Fukushima health management survey
著者

橋本浩一1, 2、中野裕紀1, 3、坂井晃1, 4、島袋充生1, 5、風間順一郎1, 6、高橋敦史1, 7、大平哲也1, 3、橋本重厚1, 8、坪倉正治1, 9、渡邊和之1, 10、林史和1, 3、長尾匡則1, 3、岡崎可奈子1, 3, 11、佐藤志帆1, 3、安村誠司1, 12、大戸斉1、神谷研二1、細矢光亮1, 2
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部小児科学講座、3 福島県立医科大学医学部疫学講座、4 福島県立医科大学医学部放射線生命科学講座、5 福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座、6 福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科学講座、7 福島県立医科大学医学部消化器・リウマチ膠原病内科学講座、8 福島県立医科大学会津医療センター糖尿病内分泌代謝内科学講座、9 福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、10 福島県立医科大学医学部整形外科学講座、11 福島県立医科大学保健科学部理学療法学科、12 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

掲載誌 Pediatr Int. 2023 Jan-Dec;65(1):e15656.
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