研究・論文
Comparison between external and internal doses to the thyroid after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident
福島第一原発事故後に甲状腺が受けた外部被ばく線量と内部被ばく線量の比較
要約
福島原発事故後に、放射線被ばくと甲状腺がんとの関連について検討がされてきました。放射線被ばくの形態として、体の外から放射線を受ける外部被ばくと、体内に取り込んだ放射性物質から発生する放射線を受ける内部被ばくがあります。事故後初期の測定データが不足していたため、内部被ばくによって甲状腺が受けた線量を個々人について評価することは最近まで困難でした。そのため、放射線被ばくの指標として外部被ばく線量がしばしば用いられてきました。
しかしながら、外部被ばく線量と内部被ばく線量はお互いに関連しているのか(外部被ばくが高いほど内部被ばくも高いといった関係があるのかどうか)は評価されてきませんでした。最近になって、個々人について基本調査の行動記録をもとに甲状腺の内部被ばく線量を推計する方法が開発された状況を踏まえて、本研究では甲状腺が受けた内部被ばく線量と外部被ばく線量との関連を解析しました。
浜通り・中通りから4つの市を選んで、事故当時20歳未満で基本調査に回答した方を200人ずつ無作為に抽出し、甲状腺の外部被ばく・内部被ばく線量をそれぞれ評価しました。その結果、個々人に関する内部被ばくと外部被ばくとの間に明確な関連は見られませんでした。また別の解析として、原発周辺の16市町村それぞれについて推計した甲状腺内部被ばく線量の中央値(データを小さい順から並べたとき、全体の真ん中にくる値)と、甲状腺外部被ばく線量の中央値との比を評価しました。この比を16市町村それぞれについて求めてみると、15歳児について比は0.56から13.8の間、1歳児について比は0.91から21.1の間の値でした。
16市町村で、この比が同様の数値であれば、外部被ばく線量と内部被ばく線量はある程度関連していると言えますが、上記のように比は市町村ごとに大きく異なりました。これらのことから内部被ばくと外部被ばくとは関連があるとは言えないため、今後は内部被ばくと外部被ばくとを足し合わせた甲状腺被ばく線量を用いて、甲状腺がんと放射線被ばくとの関連を解析していく必要があることがわかりました。
書誌情報
タイトル | Comparison between external and internal doses to the thyroid after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident |
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著者 |
石川徹夫1、大葉隆1、長谷川有史1、赤羽恵一2、安村誠司1、神谷研二1, 3、鈴木元4 |
掲載誌 | J Radiat Res. 2023 Mar 23;64(2):387-398. |
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