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健康診査

Longitudinal Trends in Blood Pressure Associated with The Changes in Living Environment Caused by the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey

東日本大震災による住環境変化と血圧推移についての縦断研究:福島県「県民健康調査」

要約

2011年3月11日に発生した東日本大震災により、福島県では被災者の多くが避難生活を余儀なくされました。このような生活環境の急激な変化は、心血管疾患やバイオマーカーに長期的な影響を与えた可能性があります。そこで、震災による生活環境の変化と2012年から2015年の3年間の血圧値の関連について縦断的検討を行いました。本研究の参加者は、2011年度の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」で生活環境の変化に関する質問に回答し、かつ2012年から2015年の健康診査に参加した16 歳以上の福島県避難域住民36,474名 (男性 14,941名、女性 21,533名) です。血圧値は2012年から2015年まで毎年測定されました。一般化線形混合効果モデルを使用して、生活環境の変化と血圧値の関連性について比較検討しました。生活環境が変化した男性(震災後の住居:避難所、仮設住宅、借り上げ住宅、親戚宅)は、震災後も自宅に住んでいた男性に比べて、震災直後の拡張期血圧が有意に上昇していました(77.3 mmHg vs. 77.8 mmHg; p < 0.001) が、経時的変化に有意差を認めませんでした。この結果は震災後に上昇した拡張期血圧が、3年間低下せずに経過した可能性を示唆しています。これらの変化は、研究期間中に降圧薬を使用していない男性および2012年時点で飲酒習慣のある男性においても同様に認められました。女性では、生活環境の変化と拡張期血圧との間に関連はありませんでした。 震災による生活環境の急激な変化は、中年男性の拡張期血圧を上昇させ、その後も長期的に影響を与えた可能性があります。災害による急激な住環境変化を経験した住民に対する継続的な降圧治療、災害後の積極的な血圧モニタリング、および降圧薬の介入は、避難者の血圧を適切に管理するために極めて重要であると考えられます。

書誌情報

タイトル Longitudinal Trends in Blood Pressure Associated with The Changes in Living Environment Caused by the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey
著者

池田里美1、池田愛1, 2、大平哲也3, 4、 坂井晃 3, 5、島袋充生3, 6、前田正治3, 7、矢部博興3, 8、長尾匡則3, 4、,安村誠司3, 9、大戸斉3、神谷研二3, 10、谷川武1
1 順天堂大学大学院医学研究科公衆衛生学講座、2 順天堂大学国際教養学部、3 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、4 福島県立医科大学医学部疫学講座、5 福島県立医科大学医学部放射線生命科学講座、6 福島県立医科大学医学部糖尿病内分泌代謝内科学講座、7 福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、8 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、9 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、10 広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 Int J Environ Res Public Health. 2023 Jan 3;20(1):857.
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