研究・論文
A Six-Year Prospective Study on Problem Drinking among Evacuees of the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey
東日本大震災避難者における問題飲酒に関する6年間の前向き研究:福島県「県民健康調査」
要約
目的:東日本大震災で被災された避難住民の方々は、長期にわたる身体的・心理的な影響を受けています。本研究では、2012年度から2017年度までの避難住民の問題飲酒となる発生リスク要因と問題飲酒からの回復要因について、「こころの健康度・生活習慣に関する調査(ここから調査)」の避難住民のデータを用いて検討しました。
方法:2012年度の「ここから調査」をベースラインとし、2013年度から2017年度までを追跡調査し、男女15,976人を分析対象としました。性別、年齢階級、健康状態、精神科既往歴、生活習慣病関連、運動状態、睡眠問題、仕事変化の有無、経済状態、精神健康度(K6)、トラウマ反応(PCL)、社会的孤立(LSN-6)、飲酒量を独立変数として、単変量および多変量Cox解析を行い、問題飲酒を継続させるリスク要因と、問題飲酒からの回復要因を明らかにしました。
結果:男性、睡眠問題、仕事の変化、トラウマ反応(PCL)が高値、精神疾患既往歴、震災後の家計の悪化、4ドリンク以上(日本酒2合以上)の多量飲酒が有意な問題飲酒の発生リスク要因となることが分かりました。男性の避難住民においては、高血圧の既往、一方、女性の避難住民では、若年と糖尿病の既往が問題飲酒の発生リスクの要因でした。さらに、トラウマ症状と多量飲酒からの回復が、問題飲酒からの回復につながる要因でした。
結論:本研究では、6年間の避難住民の問題飲酒を発生させるリスク要因には、男女に違いがあることが分かりました。男性では、高血圧の既往、女性では糖尿病の既往が問題飲酒の発生リスク要因であることが示唆されました。また、男女共に、トラウマ症状からの回復・節酒することが、問題飲酒の発生リスクを防止することが考察されました。したがって、本研究の結果から、震災後には、男女の違いを配慮し、かつ高血圧・糖尿病の治療、またトラウマ治療、節酒指導を重視した長期的な支援が必要であると思われます。
書誌情報
タイトル | A Six-Year Prospective Study on Problem Drinking among Evacuees of the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
上田由桂1、林史和2, 3、大平哲也2, 3、前田正治2, 4、安村誠司2, 5、三浦至1, 2、板垣俊太郎1, 2、島袋充生2, 6、中野裕紀2, 5、神谷研二2、矢部博興1, 2 |
掲載誌 | Int J Environ Res Public Health. 2022 Dec 25;20(1):319 |
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