研究・論文
Associations between the perception of risk in radiation exposure and changes in smoking and drinking status after a disaster: The Fukushima Health Management Survey
放射線の健康影響についての認識と震災後の喫煙および飲酒状況の関係:福島県「県民健康調査」
要約
2011年3月の東日本大震災における放射線被ばくの健康影響は、過度な喫煙や飲酒による健康影響より小さいと考えられます。しかし、被ばくによって生じる健康障害が強いと感じる人は、その心理的な不安やストレスによって喫煙や飲酒の行動が変わるかもしれません。そこで、福島県県民健康調査に答えた20歳以上の82,197名の参加者に対して、放射線被ばくで、後年に生じる健康障害(例えば、がんの発症など)がどのくらい起こると思うか[極めて低い、低い、高い、極めて高い]と、震災後の喫煙と飲酒の状況を調べました。その結果、放射線被ばくで健康障害が起こる可能性が極めて低いと思う人と比べて、その可能性が低い、高い、極めて高い、と考える人の震災後に喫煙を始めるオッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ0.96(0.78–1.18)、1.17(0.95–1.45)、1.69(1.39–2.06)でした。また、震災後に飲酒を始めるオッズ比(95%信頼区間)は、1.05(0.95–1.16)、1.17(1.06–1.30)、1.38(1.25–1.52)でした。すなわち、放射線被ばくで健康障害が起こる可能性が高いと考える人ほど、より頻繁に震災後に喫煙や飲酒を開始した可能性が示されました。公衆衛生に関わる人は、住民の不安に寄り添うとともに、喫煙や過度の飲酒の危険性について啓発を行う必要性があります。
書誌情報
タイトル | Associations between the perception of risk in radiation exposure and changes in smoking and drinking status after a disaster: The Fukushima Health Management Survey |
---|---|
著者 |
鵜飼友彦1, 2、田淵貴大3、大平哲也4, 5、中野裕紀4, 5、前田正治5, 6、矢部博興5, 7、高橋敦史5, 8、安村誠司5, 9、磯博康1、神谷研二5, 10 |
掲載誌 | Prev Med Rep. 2022 Nov 14;30:102054. |
関連リンク |