研究・論文
Loss of participation among evacuees aged 20–37 years in the disaster cohort study after the Great East Japan Earthquake
東日本大震災後の20歳から37歳の避難住民における災害コホート調査への不参加について:福島県「県民健康調査」
要約
本研究は、2011年に発生した東日本大震災後に開始された福島県県民健康調査(FHMS)の健康診査に参加しなかった若年の避難住民の特徴を明らかにすることを目的としました。FHMSは、2011年に発生した東日本大震災以降、避難住民の健康状態を評価するための前向きコホート調査として毎年実施されています。本研究では、2011年に生じた福島第一原子力発電所事故により避難した20歳から37歳までの避難住民における、健康診査の年間参加率に注目しました。2回目の調査年度以降、健康診査に参加しなかった対象者の特徴を、多変量ロジスティック回帰モデルで同定しました。健康診査の参加率は、2011 年が 26.6%(36,502 人中 9720 人)、2012 年が 15.6%(5691 人)と推定されました。多変量ロジスティック回帰モデルにより、調査初年度において、24歳以下であること(調整オッズ比[95%信頼区間];2.11, 1.84-2.42)、25から29歳であること(1.28, 1.13-1.45), 男性であること(1.52, 1.38-1.69)、福島県内の市外へ避難したこと(1.54, 1.40-1.70)、福島県外へ避難したこと(1.40, 1.21-1.63)、貧血であること(1.23, 1.06-1.43) 、喫煙歴があること(1.34, 1.21-1.48)、飲酒習慣があること(1.20, 1.09-1.32)といった特徴が、調査2年目以降の健康診査不参加に関して独立した予測因子であることが明らかとなりました。前向きコホート調査であるFHMS の健康診査への参加状況は、若年層、男性、市外への避難者、貧血歴あり、喫煙や飲酒習慣のある人で悪化傾向にあることが観察されました。したがって、この前向きコホート調査は、健康に対する意識の低い特定の集団を見落とした可能性があります。若年層の避難区域住民における災害後の長期的な健康影響を把握するためには、災害コホート調査への参加率を高めるための様々な対策を検討することが必要であると考えます。
書誌情報
タイトル | Loss of participation among evacuees aged 20–37 years in the disaster cohort study after the Great East Japan Earthquake |
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著者 |
山本佳奈1, 2、瀧田盛仁1, 2、上昌広2、谷悠太2、山本知佳1、趙天辰1、大平哲也3, 4、前田正治3, 5、安村誠司3, 6、坂井晃3, 7、細矢光亮3, 8、岡崎可奈子3, 4, 9、矢部博興10、坪倉正治1, 3、島袋充生3, 11、大戸斉3、神谷研二3, 12 |
掲載誌 | Sci Rep. 2022 Nov 15;12(1):19600. |
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