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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Posttraumatic stress response following the loss of significant close others in the Great East Japan Earthquake: Fukushima Health Management Survey

東日本大震災における大切な身近な人の喪失に伴う心的外傷後ストレス反応:福島県「県民健康調査」

要約

【背景】東日本大震災では、多くの人が家族や友人を失うなどの心的外傷を体験しました。本報告では、震災において大切な身近な人を失った経験が心的外傷後ストレス反応に与える影響とその関連要因を明らかにすることを目的としました。
【方法】対象は、東京電力福島第一原子力発電所周辺の避難指示区域等を含む市町村に居住していた16歳以上の男女180,604人でした。2012年に自記式質問紙を郵送し、40.7%の回答率、57,388の有効回答を得ました。震災における大切な身近な人の喪失体験が心的外傷後ストレス反応に及ぼす影響と、回答者からみた故人の続柄が心的外傷後ストレス反応に及ぼす影響について、カイ二乗検定とロジスティック回帰分析を用いて分析しました。心的外傷後ストレス反応の測定には、心的外傷後ストレス障害(PTSD)チェックリスト特定版(PCL-S)を使用しました。震災における大切な身近な人の喪失体験は、「今回の震災で、大切な身近な人を亡くされましたか。」という質問文で尋ね、「はい」と回答した方を死別群、「いいえ」と回答した方を非死別群と定義しました。また、回答者からみた故人の続柄は、「それはどなたですか。」という質問文に対する自由回答をもとに、「親」「配偶者」「子ども」「きょうだい」「友人」「その他」に分類しました。
【結果】震災において大切な身近な人を喪失した死別群は、非死別群と比べて1.58倍、心的外傷後ストレス反応のリスクが高いという結果が示されました(調整済みオッズ比(aOR)= 1.58, 95%信頼区間(CI)[1.50, 1.67])。また、死別群を分析対象として、震災で配偶者を亡くした回答者と、亡くしていない回答者とを比較すると、心的外傷後ストレス症状のリスクは1.67倍、子どもを亡くした回答者のリスクは1.51倍、友人を亡くした回答者のリスクは1.33と高いことが示されました(aOR= 1.67, 95% CI [1.22, 2.29]; 1.51 [1.01, 2.25]; 1.33 [1.16, 1.53])。
【結論】震災において大切な身近な家族を亡くした住民は、精神的なケアを必要とし、専門的な治療を必要とする場合もあることがわかりました。そして、震災において大切な身近な友人を亡くされた方も、家族を亡くされた方と同じようにサポートを必要としていることが示唆されました。

書誌情報

タイトル Posttraumatic stress response following the loss of significant close others in the Great East Japan Earthquake: Fukushima Health Management Survey
著者

針金まゆみ1, 2、中島聡美3、竹林唯1, 4、前田正治1, 4、中野裕紀1, 5、安村誠司1, 2、矢部博興1, 6、大平哲也1, 5、神谷研二1, 7、福島県県民健康調査グループ
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、3 武蔵野大学人間科学部人間科学科、4 福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、5 福島県立医科大学医学部疫学講座、6 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、7 広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 J Trauma Stress. 2023 Feb;36(1):129-143.
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