研究・論文
Estimation of children’s thyroid equivalent doses in 16 municipalities after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident
福島第一原発事故後の16市町村における小児甲状腺等価線量の評価
要約
福島原発事故後の甲状腺がんと放射線被ばくとの関連を解明するためには、小児についての甲状腺被ばく線量を個人ごとに評価することが必要と考えられてきました。私たちは先行研究において、吸入(呼吸を通じた取り込み)による甲状腺内部被ばく線量を再構築する方法論を報告しました。先行研究では、県民健康調査・基本調査で得られた個人の行動記録と、大気拡散シミュレーション(原発から放出された放射性物質の拡散していく様子をコンピュータで再現すること)で得られた空気中放射能濃度のデータベースを用いることによって、吸入による甲状腺内部被ばく線量を7市町村で評価しました。
本研究では、この方法論を発展させて3,256人の行動記録を用いて、原発周辺の16市町村における小児の甲状腺内部被ばく線量(吸入および飲料水摂取による甲状腺内部被ばく線量)を評価しました。事故直後にいわき市、川俣町、飯舘村、南相馬市の1,080人の小児について甲状腺の直接測定が行われましたが、本研究で得られた線量分布は、その直接測定の結果から得られた甲状腺内部被ばく線量の分布とよく似たものでした。本研究で推定した16市町村の1歳児甲状腺内部被ばく線量(地区平均)は、1.3 mSv(伊達市)から14.9 mSv(南相馬市小高区)までの範囲に分布し、95パーセンタイル値(最も被ばくした集団の線量レベル)は2.3 mSv(伊達市)から28.8 mSv(浪江町)までの範囲に分布していました。今後、この方法論は原発事故後の甲状腺がんに関する疫学研究に役立てることが可能であると考えられます。
書誌情報
タイトル | Estimation of children’s thyroid equivalent doses in 16 municipalities after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident |
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著者 |
鈴木元1、石川徹夫2、大葉隆2、長谷川有史2、永井晴康3、宮武裕和4、義澤宜明4 |
掲載誌 | J Radiat Res. 2022 Dec 6;63(6):796-804. |
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