研究・論文
Achievements and Current Status of the Fukushima Health Management Survey
調査概要 福島県「県民健康調査」の実績と現状
要約
福島県「県民健康調査」(FHMS)は、2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所の事故を受けて開始されました。この調査の主な目的は、住民の長期的な健康状態を把握し、将来の幸福を促進すること、そして長期的な低線量放射線被ばくの健康影響を明らかにすることです。本論文では、FHMSの結果をまとめ、今後の調査の方向性やFHMSの現状と課題について議論します。FHMS は、事故時に福島県に居住していたすべての人を対象としたコホート調査で、基本調査、甲状腺検査、健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査から構成されています。基本調査の行動記録に基づき、放射線被ばく線量を推定しました。基本調査の回答率は低かったですが、追加調査により被ばく線量データの代表性は確認されました。甲状腺がんの数は当初の予想より多く検出されましたが、放射線被ばく線量と甲状腺がんのリスクには関係がないと思われます。継続的に実施している健康診査、こころの健康度・生活習慣に関する調査からは、心身の健康状態の悪化が確認されています。妊産婦に関する調査からは、早産率、低出生体重児率、先天奇形率は全国平均とほぼ同じであることがわかりました。上述のエビデンスから、福島県は、検討委員会の勧告に従って、2021年に妊産婦に関する調査を終了することを決定しました。FHMSの枠組みは変わりませんが、調査結果や対象住民・市町村のニーズの変化に応じて、FHMSを適応させていく必要があります。
書誌情報
タイトル | Achievements and Current Status of the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
安村誠司1, 2、大平哲也1, 3、石川徹夫1, 4、志村浩己1, 5、坂井 晃1, 6、前田正治1, 7、三浦 至1, 8、藤森敬也1, 9、大戸 斉1、神谷研二1, 10 |
掲載誌 | J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S3-S10. |
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