研究・論文
A Comprehensive Review of the Progress and Evaluation of the Thyroid Ultrasound Examination Program, the Fukushima Health Management Survey
甲状腺検査の経過と評価に関する包括的総説:福島県「県民健康調査」
要約
2011年3月11日の東日本大震災とその後の津波により、福島第一原子力発電所で事故が発生し、原子炉が大規模な被害を受け、大量の放射能汚染が発生しました。放射線被ばくによる健康被害への不安から、福島県では県民健康管理調査事業の一環として事故当時0歳~18歳だった住民に対し甲状腺検査を開始しました。
本検査は、一次検査と二次検査で構成されています。一次検査では、主に携帯型超音波診断装置を用いて、甲状腺結節や嚢胞に関する検査を行っています。二次検査は、一次検査で指摘された超音波所見の臨床診断または細胞診診断を行っています。
2021年6月30日時点で、先行検査、本格検査(検査2回目)、同(検査3回目)、同(検査4回目)、25歳時の節目の検査で、細胞診診断にて悪性ないし悪性疑いと判定された結節が発見された受診者はそれぞれ116人、71人、31人、36人、9人でした。現在、本格検査(検査4回目)の二次検査、本格検査(検査5回目)の一次検査および二次検査が進行中です。先行検査、本格検査(検査2回目)の結果においては、検出された甲状腺がんと放射線被ばくの関連がなく、放射線の影響はないと判断されています。
この総説では、甲状腺検査の方法、検査の同意取得方法などを詳述するとともに、これまで得られた結果を概説しています。さらに、低リスク甲状腺がんの過剰診断を抑制するための対応や、参加者とその家族への心理的サポートなど、甲状腺検査における課題に対して実施している方策についても詳述しています。
書誌情報
タイトル | A Comprehensive Review of the Progress and Evaluation of the Thyroid Ultrasound Examination Program, the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
志村浩己1, 2、鈴木悟1、横谷進3、岩舘学1, 4、鈴木聡1, 4、松塚崇1、瀬藤乃理子5、大平哲也1, 6、安村誠司1, 7、鈴木眞一4、大戸斉1、神谷研二1, 8、甲状腺検査グループ |
掲載誌 | J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S23-S35. |
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