研究・論文
Development of Fukushima disaster
福島原発事故の経緯
要約
本章では福島第一原発事故の経緯について解説しています。
2011年3月11日、東日本大震災に伴い、福島第一原発の原子炉建屋において水素爆発が起き、放射性物質が外部に放出されるという重大な事故が発生しました。放射性物質から放たれる放射線は、放射線の種類や暴露箇所などにより程度が異なるものの、デオキシリボ核酸(DNA)の損傷を引き起こす懸念がもたれています。そのため、この重大な事故は、人々の不安を大きく駆り立てたのでした。
原子力災害に関する法令等で、原発事故の発生時は、政府により、情報が中央集権的に管理され、避難等の指示が出されることが定められています。しかし、事故当初、福島県の通信手段は地震や津波の影響で大きく制限され、また、政府関係者の現地入りの遅れや放射線量のモニタリングポストの故障といった事態から、政府は十分に事態を把握できていませんでした。そのため、住民は、放射線の目に見えない脅威への不安の中、十分な情報を得られないまま避難することとなりました。
事故の後、福島県は、低線量放射線の長期的な影響を把握し住民の健康維持・増進を図ることを目的として、毎年の調査を実施しました。この調査には、基本調査と詳細調査から成り、放射線の影響について被ばく線量の推計や、甲状腺がんを含む身体的な影響のチェック、精神的健康や生活習慣、妊産婦に関する調査が含まれます。この他、福島県では、放射線被ばくのスクリーニングの実施や、アドバイザリーグループの設置など、多くの取り組みがなされました。
本章は、本書籍をより深く理解するための基礎情報として事故の経緯について解説しています。本章に続く各章では、より詳細に福島第一原発事故における学際的な取り組みを紹介しています。
書誌情報
タイトル | Development of Fukushima disaster |
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著者 |
小林智之1, 2、安村誠司1, 3 |
掲載誌 | Health Effects of the Fukushima Nuclear Disaster 2022, Pages 3-20 |
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