研究・論文
Lifestyle-related diseases caused by evacuation: Results of the comprehensive health check in the Fukushima health management survey
避難による生活習慣病:福島県「県民健康調査」における健康診査の結果
要約
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、津波による福島第一原子力発電所の事故により、多くの住民が避難を余儀なくされ、福島県では、16万人以上の住民が避難生活を送りました。本稿では、福島県内の避難区域住民を対象に実施されている「健康診査」のこれまでの結果をまとめ、今後の課題について論じました。健康診査は2011年以降毎年避難区域の住民約21万人を対象として実施されています。これまでの調査結果では、東日本大震災後、福島県の避難区域の住民では、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を持つ人の割合が増加し、実際の避難された人ではさらにその割合が増加しました。また、避難の生活習慣病への影響は震災後7年以上継続し、震災後に増加した肥満や生活習慣病は、一部改善したものの、震災前の状態には完全には戻っていないことが明らかになりました。さらに、避難の影響は大人だけではなく子供にも同様にみられました。これらの結果から、福島で震災後に避難を経験した住民は、循環器疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症リスクが持続していることがわかりました。2021年現在、35,000人以上の福島県民が避難生活を続けています。したがって、震災後の避難者の将来の心血管疾患の発症を予防するために、自治体や地域の協力のもと、心血管疾患危険因子に対する継続的な予防プログラムを実施する必要があります。
書誌情報
タイトル | Lifestyle-related diseases caused by evacuation: Results of the comprehensive health check in the Fukushima health management survey |
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著者 |
大平哲也1, 2, 中野裕紀1, 2, 岡崎加奈子1, 2, 3, 林史和1, 2, 長尾匡則1, 2, 坂井晃1, 4, 細矢光亮1, 5, 島袋充生1, 6, 安村誠司1, 7, 大戸斉1, 神谷研二1, 8 |
掲載誌 | Health Effects of the Fukushima Nuclear Disaster 2022, Pages 99-121 |
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