研究・論文
Psychosocial support for anxiety related to thyroid cancer: A team approach during the secondary confirmatory examination in thyroid ultrasound examination
甲状腺がんに関連した不安に対する心理社会的支援~甲状腺検査二次検査におけるチームアプローチ~
要約
福島県の県民健康調査の一つである甲状腺検査(TUE)は、2011年の東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故により、小児の甲状腺がんの増加が懸念されたため、福島県の子どもたちの健康を長期にわたって見守ることを目的として実施されるようになりました。検査は、超音波検査による一次検査と、より詳しい超音波検査・血液検査を行う二次検査に分けられ、一次検査で一定以上の大きさの結節や嚢胞が見つかった場合、二次検査が推奨されます。そのため、二次検査を推奨された受診者やその家族は、甲状腺がんに対して強い不安をもたれている場合が少なくありません。そこで福島県立医科大学では、2013年11月に「甲状腺サポートチーム」を立ち上げ、専任のスタッフが、他のスタッフと連携し、チームで二次検査での心理社会的な支援、いわゆる心のケアを行っています。例えば、来院時には何か不安なことがないかお声かけし、受診後は、検査結果の説明や次回以降の見通しが理解できたかを確認し、必要に応じて情報提供などを行っています。
本稿では、試行錯誤の中で実施してきた二次検査における心理社会的支援について、その手順や方法などを紹介しました。また、二次検査においてしばしば聞かれる質問、例えば「なぜ結節ができたのですか?」「良性の結節が悪性に変化することはありますか?」「甲状腺がんはどのような治療を行うのですか?」といった質問に対して、どのように対応しているかについて詳述しました。
甲状腺検査が開始されてから10年以上が経過し、検査が長期に継続される中で、検査の任意性やメリット・デメリット、受診者の年齢の上昇、放射線被ばくや甲状腺がんに対する情報量やリスク認知も人によって大きく異なり、二次検査において心理社会的支援を行う際に配慮すべき事項も、多岐にわたるようになりました。丁寧にお話を伺い、一人ひとりが持つ情報量、理解の程度、思いなどを確認した上で、必要な情報を提供することが重要となってきています。また、受診者年齢の増加に伴い、県内外での受診の利便性を高め、このような心理社会的支援を充実させていく必要があります。ほかにも、サポートスタッフには、家族と本人の意見に相違がある場合に、その相違を調整するという大切な役割があるため、甲状腺検査における家族支援のあり方についても、なお一層、検討していく必要があります。
書誌情報
タイトル | Psychosocial support for anxiety related to thyroid cancer: A team approach during the secondary confirmatory examination in thyroid ultrasound examination |
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著者 |
瀬藤乃理子1, 2、鈴木悟1、志村浩己1, 3 |
掲載誌 | Health Effects of the Fukushima Nuclear Disaster 2022, Pages 231-246 |
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