研究・論文
Effects of External Radiation Exposure on Perinatal Outcomes in Pregnant Women After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey
福島第一原子力発電所事故後の外部被ばくが妊婦における周産期予後に及ぼす影響:福島県「県民健康調査」
要約
背景:本研究は福島県県民健康調査のデータを用いて、福島第一原子力発電所事故を妊娠中に経験した女性の放射線外部被ばく線量と周産期予後との関連について調査したものです。
方法:県民健康調査における妊婦への質問票から得られた妊娠・出産に関するデータと同調査における基本調査のデータを組み合わせて、対象妊婦の福島第一原子力発電所事故による外部被ばく線量を明らかにしました。二項ロジスティック回帰分析を用いて妊婦への外部被ばく線量と周産期予後の関係を分析しました。
結果: 2011年度の妊産婦調査に回答した9,259人のうち、合計6,875人が解析対象となりました。先天性奇形は2.9%に、低出生体重児は7.6%に、胎児発育不全(10パーセンタイル未満)は8.9%に、そして早産は4.1%に生じました。母親の外部被ばく線量の中央値は0.5mSv(最大5.2mSv)でした。外部被ばく線量を0-1mSv(基準)、1-2mSv、および2mSv以上に分類すると、先天奇形については、1-2mSvの調整オッズ比は0.81(95%信頼区間[CI] 0.56-1.17)でした(2mSv以上の被ばく者はいませんでした)。1-2mSvおよび≧2mSvにおけるそれぞれの調整オッズ比は、低出生体重児では0.91(95%CI 0.71-1.18)および1.21(95%CI 0.53-2.79)、SGAでは 1.14(95% CI 0.92-1.42)および 0.84(95% CI 0.30-2.37)、早産では 0.91(95% CI 0.65-1.29 )および 1.05(95% CI 0.22-4.87) でした。また、基本調査と組み合わせることで生じる外部被ばく線量の欠測データを多重代入法で補完しても結果は変わりありませんでした。結論:福島第一原子力発電所事故による外部被ばく線量は、先天性奇形、低出生体重児、胎児発育不全、および早産の発生と関連はみられませんでした。
キーワード:原発事故、放射線量、母体被曝、妊娠、周産期予後
書誌情報
タイトル | Effects of External Radiation Exposure on Perinatal Outcomes in Pregnant Women After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
安田 俊1, 2、岡崎 可奈子2, 3、中野 裕紀2, 4、石井 佳世子2、経塚 標1、村田 強志1、藤森 敬也1, 2、後藤あや2, 5、安村 誠司2, 6、太田 操2, 7、幡 研一2, 8、鈴木 孝太2, 9、中井 章人2, 10、大平 哲也2, 4、大戸 斉2、神谷 研二2, 11、福島県県民健康調査妊産婦部門 |
掲載誌 | J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S104-S114. |
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