研究・論文
Effects of External Radiation Exposure Resulting From the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident on the Health of Residents in the Evacuation Zones: the Fukushima Health Management Survey
福島第一原子力発電所の事故による放射線被ばくが避難区域住民の健康に及ぼす影響:福島県「県民健康調査」
要約
【背景】東日本大震災による福島第一原子力発電所事故(以下、原発事故)では,事故後の避難と生活習慣病 の発症との関連性が報告されています。しかし、原発事故による推定外部個人被ばく線量(以下、線量)と生活習慣病の発症との関係は明らかになっていません。
【目的】本研究では個人レベルで評価された原発事故後の線量と生活習慣病との関連について検討しました。
【方法】2011年度に福島県県民健康調査「健康診査」 を受診した福島県民72,869人(男性31,982 人、女性40,887人)のうち、16歳から84歳までの54,087人(男性22,599人、女性31,488人)のデータを解析しました。福島県県民健康調査「基本調査」による原発事故後4か月間の行動記録の情報に基づいて評価された線量について、1mSv未満、1-2mSv、および2mSv以上の3グループに分類しました。行動記録が得られなかった25,685人の線量データを、多重代入法により補完しました。2011年度をベースラインとして線量1mSv未満を基準として、2011年度から2017年度までの疾病の発生の有無と線量との関連をCox比例ハザードモデルを用いて解析しました。
【結果】2011年度から2017年度にかけて、年齢・性別調整モデルでは、2mSv以上の群は、1mSv未満に比べて、高血圧(HR:1.29(95% CI:1.16-1.44))、糖尿病(1.17(1.02-1.36))、脂質異常症(1.28(1.04-1.57))、高尿酸血症1.16(1.04-1.29)、肝機能障害1.17(1.06-1.29)、多血症1.32(1.02-1.71) の発症と関連していました。しかし、避難状況や生活習慣関連因子をさらに調整すると、有意な関連性は消失しました。また、外部被ばく線量とその他の生活習慣病との関連は認められませんでした。
【結論】避難区域住民において線量は原発事故後の生活習慣病の発症と直接関連していませんでしたが、避難状況や生活習慣が発症に関連していることが示唆されました。今後も避難区域住民の生活習慣病発症を注視していく必要があります。
書誌情報
タイトル | Effects of External Radiation Exposure Resulting From the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident on the Health of Residents in the Evacuation Zones: the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
坂井晃1, 2、長尾匡則1, 3、中野裕紀1, 3 、大平哲也1, 3、石川徹夫1, 4、細矢光亮1, 5、島袋充生1, 6、高橋敦史1, 7、風間順一郎1, 8、岡崎可奈子1, 9、林史和1, 3、安村誠司1, 10、大戸斉1, 11、神谷研二1 |
掲載誌 | J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S84-S94. |
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