研究・論文
Synergistic Effect of History of Cardiovascular Disease and Mental Distress on Post-Traumatic Stress Disorder after the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey
東日本大震災後の心的外傷後ストレス障害に対する循環器疾患既往と精神的不調との相乗効果:福島県県民健康調査
要約
循環器疾患及び精神的不調はどちらも⼼的外傷後ストレス障害(PTSD)のリスク因子と考えられていますが、両者の組み合わせの効果については未だ明らかではありません。本研究は、東⽇本⼤震災後の PTSD 症状に対する循環器疾患既往と精神的不調との相乗効果について評価することを⽬的としました。
2011 年に実施された福島県県⺠健康調査の「こころの健康度・⽣活習慣に関する調査」に回答した40~74 歳の 38,392 名を対象にしました。PTSD Checklist—Stressor-Specific Versionの合計得点が 44 点以上をPTSD 症状ありとし、K6スコアが 5 点以上を精神的不調ありとしました。ロジスティック回帰分析を用いて、循環器疾患既往と精神的不調との組み合わせとPTSD 症状との関連、並びに同組み合わせの相乗効果について解析しました。年齢、性別、喫煙、飲酒、運動習慣、高血圧既往、糖尿病既往、高脂血症既往について調整しました。
対象者のうち8,104例(21.1%)でPTSD 症状がみられました。循環器疾患既往のみ有すること(OR:1.44、95%CI:1.04〜2.01)、精神的不調のみ有すること(OR:20.08、95%CI:18.14〜22.22)、両者とも有すること(OR:26.60、95%CI:23.07〜30.67)はいずれもPTSD 症状と有意に関連しました。また両者の相互作用による相対的過剰リスクに有意差が認められました(Relative excess risk due to interaction:6.08、95%CI:3.16〜9.00、Attributable proportion:22.9%)。男女別の解析においても同様の結果が得られました。
本研究は、福島県内の避難地域等の住民において、循環器疾患既往と精神的不調が震災後の PTSD 症状に相乗的に関連する可能性を示しました。災害後のPTSD対策において、循環器疾患既往と精神的不調は同時に考慮される必要があると考えられます。
書誌情報
タイトル | Synergistic Effect of History of Cardiovascular Disease and Mental Distress on Post-Traumatic Stress Disorder after the Great East Japan Earthquake: The Fukushima Health Management Survey |
---|---|
著者 |
手塚一秀1、久保田康彦1、⼤平哲也2,3、中野裕紀2,3、前⽥正治3,4、⽮部博興5、安村誠司6、針⾦まゆみ3、清水悠路1、岡田武夫1、木山昌彦1、神⾕研⼆3,7 |
掲載誌 | Int J Environ Res Public Health. 2021 Sep 29;18(19):10283. |
関連リンク |