研究・論文
The relationship between geographical region and perceptions of radiation risk after the Fukushima accident: The mediational role of knowledge
福島第一原子力発電所事故後の地理的地域と放射線リスク認知との関連:知識の仲介役割
要約
福島第一発電所事故によって引き起こされた放射線の健康影響に対するリスク認知は、心理的苦痛や偏見、差別等と関連することが示されています。福島県とそれ以外の地域でリスク認知に差があることが明らかとなっていますが、その関連と放射線の健康影響に関する知識が果たす役割は明確に理解されていません。そこで本研究では、まず放射線の遺伝的リスク認知に関するリンデルの尺度 ※の妥当性を、日本の交通事故死亡率と比較した時の遺伝的リスクの大きさの認知と比べることで評価しました。次に、リスク認知と地理的地域との関連を調査し、その関係において知識が持つ役割 について検証しました。
調査は2018年8月にオンライン調査を実施し、東京都と福島県それぞれ416名、合計832名を対象としました。リンデルの尺度で測定される遺伝的リスク認知と交通事故死亡率と比較した時の遺伝的リスクの大きさの認知の間には有意な関連が認められ、その妥当性が確認されました。また、原爆による被ばくの遺伝的な影響に関する知識を持っていることは、低い遺伝的リスク認知と関連していました。さらに、リスク認知の地域間の差は、この知識を有しているかどうかによって説明されました。しかしながら、知識を有する人の約40%は依然として高いリスク認知を有しており、このことは知識を提供することは必要かつ重要ではあるものの、十分ではないことを示しています。よって、知識を共有する取り組みに加えて、人々が感じる不安に対する相互コミュニケーションが重要です 。
※遺伝的リスク認知に関するリンデルの尺度とは「こころの健康度・生活習慣に関する調査」で用いられている、放射線の遺伝的な影響に対する個人の考えを測定する尺度を指します。
書誌情報
タイトル | The relationship between geographical region and perceptions of radiation risk after the Fukushima accident: The mediational role of knowledge |
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著者 |
柏崎佑哉1、竹林由武1、村上道夫1 |
掲載誌 | Radioprotection 2022, 57(1), 17-25 |
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