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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Associations Between External Radiation Doses and the Risk of Psychological Distress or Post-traumatic Stress After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey

福島第一原子力発電所事故後の外部被ばく線量と心理的苦痛及びトラウマ反応との関連:福島県「県民健康調査」

要約

【背景】2011年3月に発生した福島第一原子力発電所(以下、原発)事故後の放射線被ばくレベルとメンタルヘルスの関係は明らかになっていません。この研究では個人レベルで評価された原発事故後の推定外部個人被ばく線量と、心理的苦痛及びトラウマ反応との関連について検討しました。
【方法】対象は福島県県民健康調査の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の対象者(16歳以上)とし、2011年度調査のデータを用いました。同県民健康調査「基本調査」による行動記録の情報に基づいて評価された原発事故後4か月間の外部被ばく線量により、1mSv未満、1-2mSv、および2mSv以上の3群に分類し、Kessler 6-item psychological distress (K6) 13点を心理的苦痛あり、PTSD Checklist Stressor-Specific Version (PCL) 44点以上をトラウマ反応ありとしました。原発事故後の推定外部個人被ばく線量と心理的苦痛/トラウマ反応との関連について、1 mSv未満の群を基準として、年齢、性別、避難経験、放射線リスク認知、主観的健康感を調整したロジスティック回帰分析を用いて解析しました。
【結果】64,184人を対象に解析したところ、1mSv未満、1–2mSv、および2mSv以上の グループにおける心理的苦痛/トラウマ反応の有病率は、それぞれ15.1%/22.1%、14.0%/20.1%、および15.0%/21.7%でした。女性において、2mSv以上のグループでは心理的苦痛の年齢調整OR(95%CI)が1.13(0.99-1.30)とリスクが増大する傾向がみられましたが、交絡変数の調整によりOR(95%CI)は1.00(0.86-1.16)に低下しました。一方、推定外部個人被ばく線量とトラウマ反応との間に量反応関係は認められませんでした。
【結論】外部放射線被ばく線量は心理的苦痛とは関連していませんでしたが、放射線リスク認知と避難経験は、2mSv以上の群の女性における心理的苦痛のリスクを高める可能性があると考えられました。

書誌情報

タイトル Associations Between External Radiation Doses and the Risk of Psychological Distress or Post-traumatic Stress After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident: the Fukushima Health Management Survey
著者

三浦 至1, 2、長尾 匡則2, 3、中野 裕紀2, 3、岡崎 可奈子2, 4、林 史和2, 3、針金 まゆみ2, 5、板垣 俊太郎1, 2、矢部 博興1, 2、前田 正治2, 6、大平 哲也2, 3、石川 徹夫2, 7、安村 誠司2, 5、神谷 研二2, 8
1 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、2 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、3 福島県立医科大学医学部疫学講座、4 福島県立医科大学保健科学部理学療法学科、5 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、6 福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、7 福島県立医科大学医学部放射線物理化学講座、 8 広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S95-S103.
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