研究・論文
Socioeconomic status, damage-related conditions, and PTSD following the Fukushima-daiichi nuclear power plant accident:The Fukushima Health Management Survey
社会経済的状況、被災状況および福島第一原子力発電所事故後の心的外傷後ストレス障害:福島県県民健康調査
要約
東日本大震災は東北地方と関東地方に大きな被害を与え、福島県ではその後の原発事故に直面しました。これまで、社会経済的なストレス要因が災害後の個人の精神状態に及ぼす影響についてはほとんど報告されていません。そこで私達は、こころの健康度・生活習慣に関する調査に回答した避難区域住民60,704人を対象として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)チェックリスト(PCL-S)と社会経済的要因との関連を分析しました。解析は、PCL-Sの得点と年齢、性、社会経済学的指標,および震災関連変数との関係について回帰分析を行い、参加者における重度のPTSD症状を予測する因子を抽出しました。その結果、避難者の約14.1%が重度のPTSD症状(PCL-S ≥50)を有していました。また、震災後18ヶ月の時点で PCL-S得点は、女性、高齢者、低学歴者、精神疾患歴のある人、福島県外に住む人で高いことが明らかになりました。さらにPCL-S得点は、ケスラー精神的苦痛尺度の得点とともに上昇していました。震災に関連した心的外傷体験、社会経済的ストレス要因は、それぞれPCL-S得点の増加と関連していました。さらに、精神的苦痛、失業、収入減、家屋損壊、津波体験、原発事故体験、震災による親しい人の喪失は、重度のPTSD症状の有病率と関連していました。以上より、大地震、津波、原発事故という3つの複合的な災害は、福島の避難区域の住民にPTSDの重要な決定因子となり得る大きな社会経済的変化をもたらしたことが示唆されました。
キーワード:東日本大震災、心的外傷後ストレス反応、うつ、地域住民、横断研究
書誌情報
タイトル | Socioeconomic status, damage-related conditions, and PTSD following the Fukushima-daiichi nuclear power plant accident:The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
志賀哲也1, 2, 3, 章ぶん3, 4, 大平哲也3, 4, 鈴木友理子5, 前田正治3, 6, 増子博文1, 3, 矢部博興1, 3, 岩佐一1, 7, 中野裕紀3, 4, 安村誠司1, 7, 神谷研二1, 8 |
掲載誌 | Fukushima J Med Sci. 2021;67(2):71-82. |
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