研究・論文
Fine Needle Aspiration Cytology Implementation and Malignancy Rates in Children and Adolescents Based on Japanese Guidelines: The Fukushima Health Management Survey
日本のガイドラインに基づく小児・青年における穿刺吸引細胞診実施率と悪性検出率:福島県「県民健康調査」
要約
福島第一原子力発電所事故当時、18歳以下の福島県民を対象に甲状腺検査が開始されました。本検査では、日本の甲状腺結節の診断のためのガイドラインに適合する症例にのみ穿刺吸引細胞診(FNAC)が実施されています。甲状腺検査における実施基準に基づく細胞診実施状況を分析するために、FNACの実施率および甲状腺悪性腫瘍の検出率を分析しました。
本研究では、1巡目の検査である先行検査および2巡目の検査である本格検査(検査2回目)を受診したそれぞれ299,939人および269,659人を対象としました。径5.1~10.0mmの結節では悪性が強く疑われる場合、径10.1~20.0mmの結節では悪性が疑われる場合、径20mmより大きい結節では原則的にすべての結節にFNACが推奨されています。
先行検査および本格検査(検査2回目)においては、それぞれ1,362例と1,382例で径5.1mm以上の甲状腺結節が発見されています。先行検査におけるFNACの実施率は、径5.1~10.0mm、10.1~20.0mm、20.1mm以上の結節で、それぞれ20.1%、63.2%、87.7%でした。また、本格検査(検査2回目)では、径5.1-10.0mm、10.1-20.0mm、20.1mm以上の結節を持つ被検者のFNAC実施率は、それぞれ7.3%、26.0%、50.0%でした。FNACを受けた被検者における悪性結節および悪性疑い結節の検出率は、先行検査および本格検査(検査2回目)でそれぞれ21.4%および34.1%であり、二次検査時の結節サイズにより甲状腺結節を4群に分類したところ、FNAC実施者では径5.1-10.0mm群において最も高頻度に悪性ないし悪性疑いと診断されました。また、先行検査にて径5.0mm以下、5.1-10.0mmの結節を有し、本格検査(検査2回目)も受診した被検者において、本格検査によりそれぞれ0.63%、0.40%が悪性ないし悪性疑いと診断されました。一方、先行検査で径10.0mm以上の結節を有した被検者では、本格検査(検査2回目)では悪性結節は検出されませんでした。
韓国からは、診断に関するガイドライン公表前においては径5mm未満の結節に対してもFNACが94.4%に実施され、ガイドライン公表後においても、径5mm未満の結節では53.5%、径5–10mmの結節では 80.2%にFNACが実施されていると報告されており、日本のガイドラインに準拠した基準を使用する本調査においては、FNAC実施が抑制されている事が明らかになりました。また、より小さな結節では、より選択的にFNACが実施されており、先行検査において基準によりFNACの適応がないと判断された径10.0mm以下の結節の一部は、本格検査において悪性ないし悪性疑いと診断されていました。その一方、 先行検査において悪性ないし悪性疑いと診断されなかった径10.1mm以上の結節においては、本格検査において悪性ないし悪性疑いと診断されている症例はなく、径10.1mm以上の悪性結節はすべてFNACが実施されていることも明らかになりました。これらの結果は、甲状腺検査におけるFNACの実施基準の妥当性を支持するものと考えられました。
書誌情報
タイトル | Fine Needle Aspiration Cytology Implementation and Malignancy Rates in Children and Adolescents Based on Japanese Guidelines: The Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
志村浩己1, 2、松塚崇1、鈴木悟1、岩舘学1, 3、鈴木聡1, 3、横谷進4、大平哲也1, 5、安村誠司1, 6、鈴木眞一3、大戸斉1、神谷研二1, 7 |
掲載誌 | Thyroid. 2021 Nov;31(11):1683-1692. |
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