研究・論文
こころの健康度・生活習慣に関する調査
Mental Health Consequences of the Three Mile Island, Chernobyl, and Fukushima Nuclear Disasters: A Scoping Review.
スリーマイル島,チェルノブイリ,福島での原子力災害がもたらしたメンタルヘルス上の影響:スコーピングレビュー
要約
東日本大震災と福島第一原発事故で被災した多くの人々が回復において困難を抱えている状況にあります。この研究では、スリーマイル島(1979年)、チェルノブイリ(1986年)、福島(2011年)で起きた原子力発電所事故がもたらした⻑期的なメンタルヘルス上の影響を検証しました。対象研究を「調査機会を2回以上持つ前向きコホート研究または前後研究」に設定し4種のデータベース(PubMed, 医中誌 web, PsyArticles, PTSDPub)を用いて検索を行いました。その結果、合計35の論文が抽出されました(スリーマイル島 論文数11、チェルノブイリ 論文数6、福島 論文数18)。
チェルノブイリと福島の原発事故では発災後6カ月未満の早期研究の数が少ないという結果となりましたが、これは発災直後の状況が混沌としていたことを示していると考えられました。一方、スリーマイル島事故に関しては、初期段階において大規模な面接調査が行われていました。メンタルヘルス上の影響については様々なパターンが見られましたが、3つの災害のいずれにおいても、調査対象者の半数以上は低症状あるいは閾値下症状を示す群に分類されました。3つの災害を通じ、近接性で推定した放射線曝露レベルおよびスティグマがメンタルヘルスに関連する共通のリスク因子となっていました。
今回の研究成果は、歴史上最大規模の原発事故が被災者のメンタルヘルスに与える⻑期的影響について包括的に理解する一助になると考えます。
書誌情報
タイトル | Mental Health Consequences of the Three Mile Island, Chernobyl, and Fukushima Nuclear Disasters: A Scoping Review. |
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著者 |
大江美佐里 1、竹林唯 2、佐藤秀樹 2、前田正治 2
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掲載誌 | Int J Environ Res Public Health. 2021 Jul 13;18(14):7478. |
関連リンク |