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基本調査

External Doses Available for Epidemiological Studies Related to the Fukushima Health Management Survey: First 4-month Individual Doses and Municipality-average Doses for the First Year

福島県「県民健康調査」に関連した疫学研究に利用できる外部被ばく線量:事故後4ヶ月間の個人外部被ばく線量と事故後1年間の市町村平均線量

要約

福島県「県民健康調査」の一つである「基本調査」では、原発事故後4ヶ月間に個々人が受けた外部被ばく線量を評価してきました。一方で、外部被ばくは事故後4ヶ月以降も継続しており、国際機関の評価では事故後10年間の線量のうち、40%~50%が事故後1年間に受けた線量であると評価しています。そこで本研究では、事故後4ヶ月間の外部被ばく線量を市町村ごとに集計するとともに、4ヶ月間の線量と空間線量(環境中の放射線量)のデータを使って、事故後1年間の市町村平均線量を評価しました。
事故後4ヶ月間の外部被ばく線量については、線量を推計した対象者個々人の震災時居住市町村をもとに、福島県の全59市町村について線量の平均値や中央値を評価しました。また非避難区域に相当する49市町村のそれぞれについて、次のような方法で事故後1年間の外部被ばく線量を評価しました。事故後、各市町村ではサーベイメータ等による空間線量の測定が開始され、役場などの同一場所で1年以上測定が継続されました。ここで、(1)住民の生活パターン(屋内外滞在時間など)は、最初の4ヶ月とそれ以降とで大きく変化していないこと、および(2)住民の居住環境周辺の空間線量率は、サーベイメータ等で測定が行われた場所の空間線量率と同様の傾向で減衰した、という仮定に基づくと、事故後のある期間に住民が受けた外部被ばく線量は、同じ期間の居住市町村の空間線量とおよそ比例するはずです。
そこで最初の4ヶ月間について、基本調査による住民の線量と空間線量との比例関係を市町村ごとに求めておき、1年間の空間線量から比例関係を使って住民が受けた外部被ばく線量(市町村平均)を評価しました。その結果、評価された事故後1年間の線量は、いくつかの市町村で行われた個人線量計による測定結果ともおおむね(約30%以内の差で)一致 しました。また国連科学委員会の報告書で評価された値とも良い相関を示しました。これらの結果から、事故後1年間の線量の評価方法は妥当なものであると考えられました。本論文で評価した線量は、福島県「県民健康調査」に関する今後の疫学研究の基礎となるものと考えられます。

書誌情報

タイトル External Doses Available for Epidemiological Studies Related to the Fukushima Health Management Survey: First 4-month Individual Doses and Municipality-average Doses for the First Year
著者

石川徹夫、安村誠司、赤羽恵一2、米内俊祐2、坂井晃、栗原治2、細矢光亮、坂田律3、大平哲也、大戸斉、神谷研二1,4
1 福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2 量子科学技術研究開発機構、3 放射線影響研究所、4 広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 J Epidemiol. 2022;32(Suppl_XII):S11-S22.
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