研究・論文
Association between Psychosocial Factors and Oral Symptoms among Residents in Fukushima after the Great East Japan Earthquake: A Cross-Sectional Study from the Fukushima Health Management Survey
東日本大震災後の福島県民の心理社会的要因と口腔症状との関連: 福島県県民健康調査
要約
口腔の健康は、主観的な全身の健康や全身疾患と密接な関係があります。本研究では、福島県民の東日本大震災後の心理社会的要因に関連した口腔症状とその悪化の要因を明らかにすることを目的としました。
福島県県民健康調査において、2011年3月11日に東日本大震災を経験し、2012年1月18日から10月31日に行われた平成 23 年度の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に回答した15~101歳の住民64,186名を対象に口腔症状(歯の痛み、歯肉の腫れ・出血)の有無と悪化の有無、心的外傷後ストレス障害や心理的苦痛などの心理的要因、および避難や仕事の変化、親しい人を亡くしたなどの社会的要因、全身疾患の既往歴の有無、生活習慣などについて調査しました。各項目について、ない者に対するある者の口腔症状の有病率および悪化率を、ロジスティック回帰分析を用いてそれぞれオッズ比(なりやすさ)と95%信頼区間を算出しました。
口腔症状がある者の割合は10.3%、悪化した者の割合は1.6% でした。心的外傷後ストレス障害の症状あり、仕事の変化あり、精神疾患の既往あり、脂質異常症の既往あり、主観的な現在の健康状態の悪い者は、そうでない者に比べ、口腔症状を持つ者の割合が高く、多変量解析によるオッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1.80(1.57-2.07)、1.18(1.04-1.35)、1.33(1.07-1.65)、1.32(1.15-1.50)、2.12 (1.85-2.44)でした。同様に、心的外傷後ストレス障害の症状あり、仕事の変化あり、脂質異常症の既往あり、主観的な現在の健康状態の悪い者は、そうでない者に比べ、口腔症状の悪化している割合が高く、オッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ2.24(1.64-3.06)、1.88(1.34-2.65)、1.74(1.27-2.39)、2.73 (2.00-3.75)でした。
口腔症状の悪化に関連する心理社会的因子を調査したところ、心理的要因、社会的要因、身体的要因が、口腔内症状の有病率および悪化率と関連していました。
書誌情報
タイトル | Association between Psychosocial Factors and Oral Symptoms among Residents in Fukushima after the Great East Japan Earthquake: A Cross-Sectional Study from the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
舟久保徳美1、坪井綾香2、江口依里1、林史和1,3、前田正治3,4、矢部博興3,5、安村誠司3,6、神谷研二3,7、高柴正悟2、大平哲也1,3、福島県県民健康調査グループ |
掲載誌 | Int J Environ Res Public Health. 2021 Jun 4;18(11):6054. |
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