研究・論文
Associations of the COVID-19 pandemic with the economic status and mental health of people affected by the fukushima disaster using the difference-in-differences method: The fukushima health management survey.
COVID-19の流行と福島災害被災者の経済状態および精神健康との関連に関する差の差法による検討:福島県県民健康調査
要約
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行およびそれに伴う対策は、国⺠の経済状態や精神健康に影響を与える可能性がありますが、COVID-19の流行前と流行中の両時期に実施された調査が限られているため、その影響はまだ十分には解明されていません。本研究では、2011年の福島第一原子力発電所事故で被災した方々を対象に、COVID-19およびその関連対策と経済状況や精神健康との関連を、差の差法を用いて調査しました。
さらに、社会人口学的因子と経済状況や精神健康との関連を分析しました。
2018年、2019年、および2020年における心理的苦痛、問題飲酒、睡眠、失業、家計の経済状態の悪化、対人関係の問題を調査しました。各年の参加者は、自粛要請(2月26日)や緊急事態宣言(4月16日)の日にちに基づいて3つの時期(1 月30日から2月25日;2月26日から4月15日;4月16日から5月21日)に分類されました。2020年の参加者をCOVID-19およびその関連対策の影響を受けた群、2019年の参加者を対照群としました。さらに、経済状況や精神健康について、2018年と2019年の間で、3つの時期による差の大きさに違いがないかを検証しました。また、経済状況や精神健康の関連因子を特定するために回帰分析を行いました。
緊急事態宣言後において、家計の経済状態の悪化との有意な関連がみられたのに対し、問題飲酒は有意に改善されたことが示唆されました。心理的苦痛や睡眠など、その他の精神健康に関する項目については、自粛要請や緊急事態宣言の前後における有意な差異は観察されませんでした。さらに、相談者の不在は、2020年における経済状況悪化や精神健康の低下のいずれとも有意に関連していました。
以上のことから、福島原発事故で被災した方々は、2020年5月21日までにおいて、緊急事態宣言後に経済的な悪影響が生じましたが、精神健康状態は低下しなかったことが明らかとなりました。相談者がいない人を特定し、支援することが、その後の精神健康の低下を防ぐために求められます。
書誌情報
タイトル | Associations of the COVID-19 pandemic with the economic status and mental health of people affected by the fukushima disaster using the difference-in-differences method: The fukushima health management survey. |
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著者 |
村上道夫 1,2、小林智之 1,3、及川祐一 1、後藤紗織 1、桃井真帆 1、竹林由武 1,2、大平哲也 1,4、安村誠司 1,5、前田正治 1,3
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掲載誌 | SSM Popul Health. 2021 Jun;14:100801. |
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