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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Association of habitual exercise with adults’ mental health following the fukushima daiichi nuclear power plant accident: The fukushima health management survey

福島第一原子力発電所事故後の成人の習慣的な運動実施と精神的健康の関連:福島県「県民健康調査」

要約

2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故は、被災者の精神的健康状態に影響を与えました。災害後に精神的健康状態が悪い状態が⻑期化することで、身体的な不調を招く可能性があります。そのため、被災者の精神的健康状態を悪化させないことが、健康的な生活を送るために重要であるといえます。本報告では、適度な運動が精神的健康に良いことに着目し、福島第一原子力発電所事故後の成人における、習慣的な運動実施と精神的健康状態の関連を検討しました。
本報告では、福島県「県⺠健康調査」の詳細調査「こころの健康度・生活習慣関する調査」のデータの一部を用いました。福島第一原子力発電所事故による避難指示区域等13市町村に居住していた1998年4月1日以前生まれの方を解析対象者としました。日ごろの運動の頻度に基づき、運動を「ほとんど毎日している」、「週に2〜4回している」と回答した方を「週2回以上」のグループとし、「週1回程度している」、「ほとんどしていない」の3つのグループに対象者を分けました。精神的健康状態の評価には、ケスラー6項目精神的苦痛スケールを用いました。解析では、2011-2012年度、2012-2013年度、2013-2014年度の3つの期間を設定し、設定期間の1年目の習慣的な運動の頻度と、新たに生じた精神的苦痛の関連を検討しました。
2011 から 2012 年度にかけては、22,741人中1,304人(5.7%)、2012から2013年度は22,709人中1,060人(4.7%)、2013年度から2014年度は21,220人中759人(3.6%)に新たに精神的苦痛が生じました。男性では2011-2012年度の期間、女性では2013-2014年度の期間に、習慣的な運動を「ほとんどしていない」ことと精神的苦痛の新規出現が関連していたことがわかりました。
本報告から、福島第一原子力発電所事故の発生後、習慣的に運動をすることは精神的苦痛を防ぐのに有効であった可能性が示唆されました。被災された方にとって、地域の人々と一緒に運動することで、人とのつながりや交流も期待できると考えます。したがって、特に運動不足の被災者に対して、運動習慣を持ってもらうよう促すことが、精神的健康状態の維持に有効である可能性があります。

書誌情報

タイトル Association of habitual exercise with adults’ mental health following the fukushima daiichi nuclear power plant accident: The fukushima health management survey
著者

森山信彰 1、大平哲也 2、前田正治 2、矢部博興 3、三浦至 3、高橋敦史 2、針金まゆみ 1,2、堀越直子 1,2、岡崎可奈子 2、宮地元彦 4、丸藤祐子 4、神谷研二 2,5、安村誠司 1,2
1 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、2 福島県立医科大学放射線医学県⺠健康管理センター、3 福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、4 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 5 広島大学原爆放射線医科学研究所

掲載誌 Ment Health Phys Act. 2021 Mar;20:100388.
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