研究・論文
Estimation of the Early Cs-137 Intake of Evacuees from Areas Affected by the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident Based on Personal Behavioral Data and the Latest Atmospheric Transport and Dispersion Model Simulation
個人の行動データと最新の大気拡散シミュレーションモデルに基づいた福島第一原発事故避難者の初期Cs-137摂取の評価
要約
福島第⼀原発事故から9年以上が経過しましたが、この間、住⺠が受けた被ばく線量を再構築する努⼒が国内外の機関でなされてきました。しかしながら、ヨウ素131に代表される短半減期核種による内部被ばくの再構築については、事故後初期において住⺠を測定したデータが不⾜していたために困難な課題が残っていました。我々は先⾏する研究において、事故の影響を受けた地域からの避難のタイミングによって、体内セシウム残留量は⼤きく変わることを明らかにしました。すなわち、避難が遅かった⽅のほうが早く避難した⽅に⽐べて、ホールボディカウンタ測定から評価した体内セシウム残留量が多い傾向にあることが⽰されました。
本研究では、この先⾏研究の結果をさらに確かめるため、福島県「県⺠健康調査」基本調査問診票から得られた避難者の⾏動記録、および最新の⼤気拡散シミュレーション(原発から放出された放射性物質が⼤気中を拡散していく様⼦を計算機シミュレーションで再現したもの)から評価したセシウムの吸⼊摂取量と、ホールボディカウンタ測定による結果とを⽐較しました。⽐較が可能であったのは、成⼈および 15 歳で代表される年齢層(13-17 歳)の356⼈に関するデータでした。⽐較の結果、⾏動記録と⼤気拡散シミュレーションから評価した体内セシウム残留量は、避難のタイミングや避難経路の違いによる被ばく状況の傾向を再現していることが⽰されました。しかしながら、⾏動記録と⼤気拡散シミュレーションによって評価した体内セシウム残留量は、ホールボディカウンタ測定から評価された体内セシウム残留量の10-20%の値でした。
この結果について、⾏動記録と⼤気拡散シミュレーションを⽤いた⽅法では体内セシウム残留量を過⼩評価している可能性、およびホールボディカウンタ測定では摂取シナリオの設定によって体内セシウム残留量を過⼤評価している可能性の両⽅が考えられます。この点については、さらなる検討が必要であると考えています。
書誌情報
タイトル | Estimation of the Early Cs-137 Intake of Evacuees from Areas Affected by the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident Based on Personal Behavioral Data and the Latest Atmospheric Transport and Dispersion Model Simulation |
---|---|
著者 |
⾦ウンジュ1、五⼗嵐悠1,2、橋本昇三1、⾕幸太郎1、⽯川徹夫 3、古渡意彦1、栗原治1 |
掲載誌 | Health Physics. 2021;121(2):133-149. |
関連リンク |