研究・論文
The association between body mass index and recovery from post-traumatic stress disorder after the nuclear accident in Fukushima
体格と福島原発事故後のPTSD症状からの回復との関連
要約
肥満、特に内臓脂肪の蓄積は様々な代謝異常を引き起こすことが示されています。また、心的外傷後ストレス 障害(PTSD)の者もLDLコレステロールやコルチゾール、TNF-αなどのサイトカインが高いことが示されて います。したがって、肥満であることが代謝異常を通して、PTSDと関連する可能性が考えられます。そこで本研究では、体格とPTSD症状からの回復との関連を検討しました。
解析対象者は、福島第一原子力発電所事故によって避難区域に指定された地域の居住者に実施した 平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の回答者の内、20〜64歳のPTSD症状を有し(PTSDチェックリスト:PCL-S≥44)、平成23年度「健康診査」の受診者、男性:1,614人、女性:2,742人です。対象者をBMIでやせ (BMI: <18.5 kg/m 2 )、普通体重 (18.5 ‒ <25.0 kg/m2 )、過体重 (25.0 ‒ <30.0 kg/m2 )、肥満 (≥30.0 kg/m2 )に区分し、平成24年度および平成25年度におけるPTSD症状からの回復割合(PCL-S<44)をポアソン回帰分析より検討しました。 結果、PTSD症状からの回復割合は平成24年度および平成25年度において、肥満で低い傾向がありました。普通体重を基準とした時、有病割合比(95%信頼区間)は平成24年度および平成25年度 それぞれやせで1.08 (0.88-1.33)、1.02 (0.82-1.26)、過体重で1.00 (0.90-1.11)、0.99 (0.89-1.10)、肥 満で0.85 (0.68-1.06)、0.87 (0.69-1.09)でした。肥満はPTSD症状からの回復の短〜中期的な予測因子として有用な可能性が示唆されました。PTSDを有する肥満の被災者には、より厚い支援と慎重なフォローアップが必要かもしれません。
書誌情報
タイトル | The association between body mass index and recovery from post-traumatic stress disorder after the nuclear accident in Fukushima |
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著者 |
永井 雅人 1, 2、大平 哲也 2, 3、前田 正治 3, 4、安村 誠司 5、三浦 至 6、板垣 俊太郎 6、針金 まゆみ 3, 5、高瀬 佳苗 3, 7、矢部 博興 6、坂井 晃 3, 8、神谷 研二 3, 9
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掲載誌 | Sci Rep. 2021 Mar 5;11(1):5330. |
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