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こころの健康度・生活習慣に関する調査

The mental health status of children who have been evacuated or migrated from rural areas in Fukushima prefecture after the Fukushima daiichi nuclear power station accident:results from the Fukushima health management survey

東日本大震災後に福島県川内村から避難した子どものメンタルヘルス:福島県県民健康調査

要約

福島県川内村は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、全住⺠が避難生活を余儀なくされていましたが、現在では村への帰還が進められています。本研究は川内村の子どもたちの原発事故の経験に関連 したメンタルヘルスを評価することを目的としました。初年度の福島県県⺠健康調査の川内村児童の結果から年 齢、性別、運動習慣、睡眠時間、主観的な原発事故経験の有無および子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:以下 SDQ)を収集しました。SDQは、広汎性発達障害やAD/HD(注意欠陥多 動性障害)、行為障害などについての信頼性の高いスクリーニング法であり、得点が高いほど困難さが大きいこ とを意味し、支援の必要性が高いとされます。収集した結果を小学生と中学生、また原発事故の経験の有無で分 類し、SDQスコアの比較検討を行いました。有効回答は93名(59.6%)、うち小学生65名、中学生は28名でした。小学校のSDQ平均スコアは11.4±6.8点、中学生のSDQ平均スコアは12.4±6.8点で、下位尺度も含めSDQスコアに明らかな違いはみられませんでした。また、主観的な原発事故経験の有無の比較においても両者間でSDQスコアに明らかな違いはみられませんでした。本研究では、事故直後の被災地において、小中学生のメンタルヘルスの問題が確認されましたが、原発事故の経験の有無ではなく、田舎から都会へ避難したことも影 響したかもしれません。このメンタルヘルスの問題は、子どもたちの発達に有害な影響をもたらす可能性があり ます。私たちの調査結果は、福島の復興のために、避難を経験した子ども、特に移住した子どもたちと田舎に戻 る子どもたちに継続したメンタルヘルス支援を提供する必要があることを示唆しました。

書誌情報

タイトル The mental health status of children who have been evacuated or migrated from rural areas in Fukushima prefecture after the Fukushima daiichi nuclear power station accident:results from the Fukushima health management survey
著者

徳永瑛子 1 、吉田浩二 1 、折田真紀子 2 、浦田秀子 2 、板垣俊太郎 3 、増子博文 3 、矢部博興 3 、前田正治 3 、大石和代 1、井口茂 1、岩永⻯一郎 1、田中悟郎 1、中根秀之 1、高村昇 2.
1 ⻑崎大学医⻭薬学総合研究科保健学専攻、2 ⻑崎大学原爆後障害医療研究所、3福島県立医科大学

掲載誌 Fukushima J Med Sci. 2021 Feb 14
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