研究・論文
Dietary Patterns and Progression of Impaired Kidney Function in Japanese Adults: A Longitudinal Analysis for the Fukushima Health Management Survey, 2011-2015.
日本人成人の食事パターンと腎機能障害の進行:福島県民健康調査の縦断的分析、2011-2015年
要約
先行研究では、野菜類を多く摂る食事パターンの人ほど心血管代謝リスクが低下していることを明らかにしましたが、2011 年 3 月の東日本大震災後の福島県では過体重・肥満、高血圧、脂質異常症の発症者が増加しており、慢性腎臓病(CKD)発症のリスクの増加が示唆されています。しかしながら、日本国内の一般集団における食事パターンと CKD[推定糸球体濾過率(eGFR)<60mL/min/1.73m 2 または蛋白尿(試験紙法≥1+)]発症リスクとの関連についての調査はこれまで行われていませんでした。
そこで、本研究では 2011 年度の福島県県⺠健康調査(FHMS)における「こころの健康度生活習慣に関する調査」の食品摂取頻度質問票(FFQ)への回答があり、同年度に「健康診査」を受診した 40 歳から89 歳までの人のデータを基に、FHMSの追跡期間(2015 年まで)において各食事パターンと CKD 発症リスクとの関連について調査しました。
その結果、肉類を多く摂取する食事パターンでは有意な関連は観察されませんでしたが、野菜類を多く摂取する食事パターンの人では推定糸球体濾過率(eGFR)の低下や蛋白尿などの腎機能障害のリスクが低下する傾向がみられ、ジュース類を多く摂る食事パターンの人では腎機能障害のリスクが高くなることが明らかになりました。
結論として、調査の結果、日常生活における食物摂取が腎機能に影響を与えていると考えられることから、腎機能障害の進行や CKD 発症のリスクを軽減させるため、豊富な野菜の継続的な摂取を進めることが必要だと考えられます。
書誌情報
タイトル | Dietary Patterns and Progression of Impaired Kidney Function in Japanese Adults: A Longitudinal Analysis for the Fukushima Health Management Survey, 2011-2015. |
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著者 |
馬恩博 1-3*、大平哲也 1-3、安村誠司 3,4、中野裕紀 2,3、江口依里 2,3、宮崎真 1,3、細矢光亮 1, 3, 5、坂井晃 3,6、高橋敦史 3,7、大平弘正 7、風間順一郎 3,8、島袋充生 3,9、矢部博輿 3,10、前田正治 3,11、大戶⻫ 3、神谷研二 3,12
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掲載誌 | Nutrients. 2021 Jan; 13(1):168 |
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