研究・論文
Association between post-traumatic stress disorder symptoms and bone fractures after the Great East Japan Earthquake in older adults: a prospective cohort study from the Fukushima Health Management Survey.
東日本大震災後の高齢者の心的外傷後ストレス障害症状と骨折との関連性:福島県「県民健康調査」による前向きコホート研究
要約
【背景】
心理的ストレスが骨代謝に影響を与え、骨折のリスクを高めることが報告されています。しかし、骨折と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関係は明らかではありません。本研究は、災害による PTSD 症状が高齢者の 骨折リスクに及ぼす影響を評価することを目的としました。
【方法】
本研究では、2011年に実施された福島県県⺠健康調査の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に回答した骨折の既往のない 65歳以上の 17,474名を対象にし、2016年まで骨折の発生を追跡しました。年齢、性別、身体的要因、社会的要因、心理的要因、生活習慣を分析しました。
【結果】
観察期間中に 2,097 例(12.0%)の骨折が観察されました。単変量および多変量の Cox 比例ハザードモデルの結果では、PTSD 症状あり(PTSDチェックリストの合計得点が 44 点以上)(ハザード比(HR):1.26、 95%信頼区間(CI):1.10-1.44、P=0.001)、がんの既往あり(HR:1.49、95%CI:1.24-1.79、P< 0.001)、脳卒中の既往あり(HR:1.25、95%CI:1.03-1.52、P=0. 023)、心臓病の既往あり(HR:1.30、 95%CI:1.13-1.50、P < 0.001)、糖尿病の既往あり(HR:1.23、95%CI:1.09-1.39、P < 0.001)、喫煙習慣 あり(HR:1.29、95%CI:1.02-1. 63、 P = 0.036)、睡眠満足度が非常に不満か、全く眠れない(HR: 1.33; 95% CI: 1.02-1.74、 P = 0.035)が、年齢や性別とは独立して骨折リスクの有意な増加を示しました。
【結論】
本研究は、福島県内の避難地域等の高齢者において、災害による PTSD症状と不眠が、骨折リスクの上昇に寄与する可能性を示しました。
書誌情報
タイトル | Association between post-traumatic stress disorder symptoms and bone fractures after the Great East Japan Earthquake in older adults: a prospective cohort study from the Fukushima Health Management Survey. |
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著者 |
林史和 1,2、大平哲也 1,2、中野裕紀 1,2、⻑尾匡則 1,2、岡崎可奈子 2、針金まゆみ 2,3、安村誠司 2,3、前田正治 2,4、高橋敦史 2,5、矢部博興 2,6、鈴木友理子 7、神谷研二 2
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掲載誌 | BMC Geriatr. 2021 Jan 7;21(1):18. |
関連リンク |