研究・論文
Association between Psychological Factors and Evacuation Status and the Incidence of Cardiovascular Diseases after the Great East Japan Earthquake : A Prospective Study of the Fukushima Health Management Survey
東日本大震災後の心理的因子及び避難とその後の循環器疾患との関連 : 福島県「県民健康調査」を用いた前向き研究
要約
災害後の心理的因子や避難が循環器疾患に与える影響を評価した報告は限られています。本研究では、大規模コホートを用いて、心理的因子と避難との組み合わせが循環器疾患に与える影響を前向きに検討しました。東日本大震災後に福島県民を対象とした自記式調査(こころの健康度・生活習慣に関する調査)に回答し、2012年に循環器疾患の既往がなかった30~89歳の男女37,810人を、2017年まで追跡調査しました。心理的因子と避難の組み合わせに基づき、対象者を4群(両方なし、心理的因子のみ、避難のみ、両方あり)に分け、追跡期間中の循環器疾患発症を調査し、生存時間解析を行いました。追跡期間中(平均3.7年)の循環器疾患の発症者数は3,000人でした。男性では、心理的因子のみある人に対し、心理的因子と避難が両方ある人では、脳卒中と心臓病のリスクが約5~25%上昇しました。男性では、両方なし群と比べて、心理的苦痛と避難の両方あり群では、脳卒中は1.75倍、心臓病は1.49倍リスクが高くなっていました。同様にトラウマ反応と避難の両方あり群では、脳卒中は2.01倍、心臓病は1.57倍リスクが高くなっていました。女性では避難によるリスク上昇はみられませんでした。東日本大震災後の心理的因子を持つ男性に避難が加わると、循環器疾患の発症リスクがさらに上昇することが明らかとなりました。この研究は、避難を伴う災害後の循環器病予防対策に示唆を与えるものです。
書誌情報
タイトル | Association between Psychological Factors and Evacuation Status and the Incidence of Cardiovascular Diseases after the Great East Japan Earthquake : A Prospective Study of the Fukushima Health Management Survey |
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著者 |
佐能俊紀1)、江口依里2)、大平哲也2),3)、林史和2),3)、前田正治3),4)、安村誠司3),5)、鈴木友理子6)、矢部博興3),7)、高橋敦史3),8)、高瀬佳苗3),9)、針金まゆみ3),5)、久松隆史1)、荻野景規1),10)、神田秀幸1)、神谷研二3),11) |
掲載誌 | Int. J. Environ. Res. Public Health. 2020 Oct;17(21):7832 |
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