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こころの健康度・生活習慣に関する調査

Changes in drinking behavior among the evacuees of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident : the Fukushima Health Management Survey.

福島第一原子力発電所事故避難者の飲酒行動の変化:福島県「県民健康調査」

要約

本研究は、福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターにおいて平成23年度に避難区域を対象として集積した福島県「県民健康調査」の「こころの健康度・生活習慣に関する調査」を用い、被災経験と睡眠の問題が震災前に飲酒していなかった人の飲酒行動に与えた影響を検討することを目的としました。
震災当時20歳以上だった21,454人の避難者の方を対象とし、震災後に飲酒を始めた人と、震災後も飲酒者にならなかった人について、ロジスティック回帰を用いて分析しました。
その結果、震災後に飲酒を始めた人2,148人について、男性は女性の1.93倍(95% CI: 1.74-2.15)、 21歳から49歳までの人は65歳以上の1.85倍(95%CI: 1.60-2.13)、高校卒以下の人は専門学校卒・短期大学卒・大学卒以上の人の1.21倍(95% CI: 1.09-1.35)、喫煙者は非喫煙者の1.22倍(95% CI: 1.08-1.38)、大切な身近な人を亡くした人はそうでない人の1.21倍(CI: 1.07-1.37)、仕事が変わった人はそうでない人の1.19倍(95% CI: 1.07-1.32)、睡眠の問題がある人はそうでない人の1.45倍(日本語版アテネ式点数が3-8、95% CI: 1.30-1.62)、トラウマ症状が重篤な人はそうでない人の1.33倍(トラウマ反応チェックリスト(PCL)が44点以上、95% CI: 1.17- 1.51)、それぞれ飲酒を始めるリスクが高いことが分かりました。
以上のことから、震災後、避難住民において、睡眠の問題やトラウマ症状が深刻な人は、新たに飲酒行動を始めることが分かりました。今後、睡眠の問題と飲酒行動の因果関係の検証を含め、長期間にわたる縦断研究が必要です。

書誌情報

タイトル Changes in drinking behavior among the evacuees of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident : the Fukushima Health Management Survey.
著者

八木亜紀子1)、前田正治1),2)、鈴木友理子3)、矢部博興1),4)、安村誠司1),5)、丹羽真一6)、大平哲也1),7)、大津留晶1),8)、増子博文4),9)、針金まゆみ1)、中野裕紀1),7)、阿部正文1),10)
1)福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター、2)福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座、3)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神医療政策研究部、4)福島県立医科大学医学部神経精神医学講座、5)福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、6)福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座、7)福島県立医科大学医学部疫学講座、8)福島県立医科大学医学部放射線健康管理学講座、9)福島県発達障がい者支援センター、10)福島県病院局

掲載誌 Fukushima Journal of Medical Science. 2020 Dec 10;66(3):133-142
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